勝手がお好き!!~徒然満載

ゲーム依存症の創作好き

魔法使いになりたくて 転生偏2-2

ミラーはカシオネを訪ねなかった。自分を愛していてくれたことはわかる。だが考えるほどに異常な愛情だったのもわかるのだ。本当に愛してくれているなら10年待てなかったのか?学校という特殊な世界で起きた奇跡のような愛。歳を追うごとにつれて何故、自分はあんな愛を受け入れたのか自分でもわからなかった。それが初潮を向かえて変化していく。記憶が彼女を犯す。異常だったとわかっているのに求めて止まない。




だから誘いに来る男たちの言葉にもノーとは言わなかった。だけど一ヵ月ともたない。回してくる手に嫌悪感を持つ。触れてくる唇が違うと叫ぶ。舌を入れられてきても応えて恍惚とするのは男達だった。そのまま野獣のようになって求めてくるがほとんどが初めてで、そして優しさのかけらもない欲情だけだった。いくら抱かれても記憶からはがれない幼い日の経験。




16歳の夏休みになって始めてカシオネの家を訪れた。
「ミラー!」
抱きしめてくるカシオネ。10年もたつのに何故、私がミラーだとこの人はわかるのだろう?
「10年もどうしてた?」
と聞かれるのに対して
「異常だった恋に終止符をうとうとしてた」
カシオネが天を仰ぐ。
「そうだな俺たちは異常だった。普通の女の子に戻れたか?」
と寂しそうに聞く。首をふるミラー。
「初潮が始まるまでは忘れればいいと思ってたの。でも始まったら体がうずく。どれほどの数の男の子と付き合っても、何回大勢の人に抱かれても、違うって体が叫ぶの」
「お前、俺以外の男に抱かれたのか?」
と震えるカシオネ。
「沢山の人に身をゆだねたわ。殴りたい?」
「いや…俺の勝手な思いだ。気にするな」
とカシオネ。涙が流れ落ちる。
「で、運命の相手は見つかったのか」
とカシオネの声、震えてる。
「見つからない。だから来た。10年もたって、沢山の男に抱かれて、それでも幼い時の記憶が消えないから来た。今更だけど一度でいいから抱いて…」




カシオネはミラーを抱いた優しく激しく、一度でなど止まらなかった。でも抱かれた後にミラーは浮かない顔をした。
「どうした。環境が気になるか?」
「私が求めてるのカシオネでもない…何を求めてるんだろう私」
カシオネには一つだけ心当たりがあった。薬を持って来て
「痛覚剤だ。飲んで。求めてるもの教えてやる」
しばらく口付けをする恍惚となりそうな、間違いなくカシオネの口付けだ。「つっ、口の中が痛い」
「口の中だけじゃない」
カシオネが背中を撫でる。
「うぁぁっ、痛い、カシオネ」
「それがお前の求めてるものだよ。抱かれてみればわかる」
ミラーは痛みに叫び、声を上げ、許しをこい抱かれる。抱かれ終わった頃にはぼろぼろだった。体も心も…でも…
「それが、お前の求めていた感覚だ。違うかミラー」
「そうみたい。やっと満足したよ」
「二年間。苦しみを耐えさせて抱き続けた結果だ。休みの間、居られるか」
「うん。居る」
あげつづける悲鳴に様子を見に来た人間を払い、服を着させる。
「調合してくるから、しばらくはこの部屋で寝てろ」




「何をした。初めてにしてもあの痛みは異常だぞ」
と父親。
「痛覚剤を飲ませた」
「なんて残酷なことを…」
「16歳のとき六歳のあいつを抱いた。残酷な行為だ。だが…卒業まで二年抱き続けてる間に痛覚が快楽と区別つかなくなった。今、治す薬を作ってる」
「痛覚剤と魅惑剤の混合比率か」
「ああ最終的には水だ」
夏休みが終わるまでの本数が用意され、夏休みが終わる。
「もう、大丈夫だ。好きな男に抱かれて来い」
「好きな男なんて居ない。埋め合わせをしてただけよ。カシオネじゃ駄目なの?やっと大人になれたのに…」
「俺でいいのか?一番残酷なまねしたのに」
「カシオネ来た時、泣いたわ。ほかの男に抱かれたと知って。その思いも押し殺して、好きな人のとこへ行けという。それが正常なのはわかってる…でも夏休み中抱き続けたのは私のためだけ?」
「別れを覚悟して抱いてた…俺のものになってくれるか?」
「うん…冬休み来ていい?」
抱きしめられて
「本当は学校にも返したくない」
「無理言わないで」
「後二年か。待ってる、何年でも」
「うん。カシオネの元に帰るなら、他の男なんかに抱かれるんじゃなかった」
とミラーは震えてる。
「ミラーはミラーで普通の女の子になりたかった」
と抱きしめるカシオネ。
「それは俺の責任だ。お前の責任じゃない。あの時我慢できてれば傷つける事も、他の男と付き合う必要もなかった」
と抱き上げる。
「もう一度言おう。俺の彼女にいや伴侶になってくれ」
「何故?最初から私にこだわったのか私にはわからないけど…貴方が誰よりも愛してくれているのはわかるから」
「…それは一生わかってくれないかもしれないが…」
「カシオネ?言ってくれなきゃわからないこともあるわ」
「幼い頃見た夢、まだ覚えてるか?」
「もちろん。魔術師を目指したきっかけだもの」
「それが全ての始まりだ。何度生まれ変わっても、俺は…全てのミラーを覚えてる」
「生まれる前の過去を?」
「そうだ前世をだ」
「残酷ね、私は覚えてないのに」
「だから求める、きっとお前が思い出したとき、俺のこの前世のめぐりは終わる気がする」
「カシオネ、それは長い道のりよ」
「いっそ、この魂を破壊できるならと何度も思ってる」
「愛してるわ永久に。私は必ず貴方の腕の中に戻るから許して頂戴。絶対なにがあってもカシオネ貴方の側で死ぬわ」
「その約束はずっと守られてきた」
「何度私は生まれ変わってるの?」
「それは言わない」
とカシオネ。
「学校に戻るわ。必ず卒業したら来るから」
「できたら休みに来てくれ俺の心がもたない」
「何年でも待つのでは?」
「何年だって、今までも待ってきた。でもできるなら一分とて待ちたくない。生まれてきたからとて出会えない時もあるんだ。それに比べたら…」
「…カシオネ…それでもまってるの?」
「そんな時でも待ち続けてる。待たずには居られない」
「かわいそうな人、次の休みにも必ずくるわ」




そして冬休み、夏休み、冬休みその度にミラーは訪れる。もう愛されることに、愛することに迷いはなかった。卒業すると迷わず親の反対を押し切って魔法界に来た。
「よくフォレストに入ってくれる決心をしてくれた。風当たりもきついが耐えてくれ。どれもこれもフォレストをより強く、よりよい錬金術師に導く為だ」
と父。
「フォレストの犠牲にはしない。ミラーだけは絶対に」
とカシオネ。
「何ができる娘。錬金術はできないのだろう」
「戦うことなら攻撃、技術、幻術、召還と学びました」
「ふむ。ガーディアンにでもなるつもりだったか?」
「そのつもりでした」
「狩りはできるかもしれんな。教えてやれカシオネ」
「最初からそのつもりだよ。ミラーの狩りの才能はすごい」
「ほーっ。何を持って判断している。現世で使えねば何も意味がないのだぞ。最悪床寝でもしてもらうさ。光の者だしな」
「ミラーは俺のものだ。娼婦の真似事などさせない」
「私はとんでもないとこに来ちゃったみたいだね」
「ミラー、そんな真似させないからたとえ一緒に死んででも他の男にくれてはやらない」
「ついた傷はカシオネが癒してくれればいい。これでも三年は男狂いしてたんだよ。大丈夫、体なんてなんでもない」
「俺が嫌なんだミラー、本来の君は何人もの男に身を任せられる奴じゃない。俺の腕の中で育って、俺の腕に抱かれて、他の男から口付けされるのも耐えられなかった。それがミラーだ」
「カシオネが思ってるのは最初のミラーだけ?私はカシオネの腕の中で育っても無ければ、他の男も知ってる汚らわしい?過去のミラーと完全に同じにはなれないよカシオネ…」
カシオネの目から涙が伝って落ちていく。
「半分は自業自得だ。お前を傷つけるような愛仕方をしたから…でもたった二年で俺に繋ぎ止めとくにはそれしか思いつかなかった。すまない。今のお前を愛せないなんてことはない。何時どんな形で知り合ってもミラーはミラーだ」
と抱きしめる。
「狩りを覚えるよ。それがカシオネを一番苦しめなくて済みそうだし、泣かないでカシオネ。私は貴方だけを愛してる」
「定めを変えるのはとても難しいんだよミラー。ミラーに会えるのはまれでその中で幸せにしてやれるのはさらに不可能に近い」
「ミラーは親を捨ててきた」
びくっとするカシオネ。
「ミラーにはカシオネしかいない。やっと一緒に暮らせる」
カシオネの涙を唇でぬぐい、カシオネを抱きしめる。
「これから一番幸せな時間が待ってる。そうでしょう?」
そして口付けをする深く激しく
「お前、上手くなったな」
「教えたのはカシオネよ」
と苦笑する。
「いや、その、最初の…」
手で唇にまったをかけられる。
「これが今の私、そして未来にどんな不幸が待っていても後悔しないから。カシオネと一分でも長く居させて」
「10年の差は厳しいな。お前は本来そんなけ、強い人間だったんだな。俺は側で駄目にしてたのか」
「そんなことはない。カシオネ、過去の後悔はいくらしても足りないくらい。私だってカシオネだけを知り、カシオネの側で育ち、カシオネだけのものになりたかった」
ミラーが震えている。
「でも過去は変えられない」
と笑う。
「ここでやっていけるかもわからない。それでも幸せの時間を作ろう。来世のカシオネのためにどんな死に方をしても悪くなかったと思ってほしい」




来世のカシオネのためにどんな死に方をしても悪くなかったと思ってほしい。それはカシオネにとって過去から未来へとつなぐ唯一の希望となる。




その後21歳で出産したばかりの狩場で二人は死ぬ。身内の矢に射抜かれて…前世に捕らわれた人間は不要とばかりに父が仕向けたものだ。二人一緒に殺したのがせめてもの父の愛情だった。
「定めを変えるのは…とても…難しい…んだよ…ミラー…」
「みたい…だね…幸せ…だったよ」








学校に入ってすぐカシオネは食事を一人でしていた。
「ここいい?」
と同じ年頃の女の子が聞いてくる。
「いいけど…僕はカシオネ=フォレスト。フォレスト家の末っ子だよ」
「ミラーはミラー=レルゼンよろしくね」
と座ってしまう。
「フォレスト家のものなんだけど…」
「うん。遠くから見たらまるでここだけ私のために開いてるみたいだったんだもん」
とにっこり笑う。
「もしかして君は人間?」
「そうだよ」
「魔法使いでフォレスト家に近づく者はいないからね」
「何故?」
「最強にて最悪な錬金術師一家だからさ。僕が怖くないなら一緒に勉強もするかい?」
「それは助かる。ミラーも人間で誰も声かけてくれないんだ」
「何故魔法学校に入ったんだい」
「魔法使いになって戦ってる夢見るの。傍らに大事な人がいて自分もその人も死んじゃうんだけどね」
「…その夢僕も良く見る…」




カシオネが前世を忘れ再びミラーと出会うにはさらに何度もの転生を必要とする。二人のこの会話は最後の転生の最後の最後の物語。















転生編2-1
http://d.hatena.ne.jp/MitamaToki/20140222













転生編 1-1 ミラー編
http://sns.atgames.jp/diary/25652393

転生編 3-1 ミラー編
http://sns.atgames.jp/diary/25821996

転生編 4-1 ミラー編
http://d.hatena.ne.jp/MitamaToki/20140502