勝手がお好き!!~徒然満載

ゲーム依存症の創作好き

魔法使いになりたくて 65

お互いがお互いの命をかける約束を交わして以来二人は怖いほど落ち着いていた。




降格したエンジェルたちも何も言わない。トクマは再び魔法庁勤務に戻り、忙しいみたいだ。エンジェルから謝罪として人形が贈られてきていた。手をつないだ男の子と女の子。死さへ覚悟して、自分たちに向かってくるとはっきり言い切ったミラー。今はミラーに負ける気はしない。それはミラーも気付いてるはずだ。それは死んでも、もう嫌だからね、というメッセージであり、自分で自分の心臓を止めようとした苦しみ。自分の意思を深層の奥に追いやった悲しみ、それを抜け出て決めた、エンジェルたちを敵に回す覚悟。ミラーは殺しさへいとわない、本物の危険因子だと思い知る。彼女の鍵はカシオネひとつなのだ。無くなることを考えるとぞっとする。本当に強い黒魔術師はそんな人から生まれるのをエンジェルは知っていた。ドルドネには釘をさしといたが、光が闇に転換する可能性、それは決して低いものではない。よかれと思った行動がミラーの心を一歩、闇に近づけていた。お願いだから願わくば、いつもの笑いを取り戻したミラーに戻って欲しい。エンジェルの苦悩は耐えたことが無い。




「光よ一匹の獣を束縛せよ」
一瞬だが立ち往生する光ウサギ。
「闇夜一匹の獣の心臓を切り裂け」
だが倒れない。長い一角をドルドネに向かって突き刺そうとする。
「水よ一人に加護を何重にもそして風よ足を切り落とせ」
とカシオネ。ドルドネに向けられた角はギリギリ守護に守られたが足は切られてない。
「光よ一匹の獣の心臓を切り裂け」
まだ倒れない。
「土よ剣となり現れよ。闇よ剣にまとわり付け」
とドルドネ。もう一度、襲ってくる光ウサギを突き刺した。じたばたしていたが死んでいく。
「ふーっ三人がかりでやっと一匹か」
「一匹居れば充分だ。帰るぞ」
寄り添う二人は軽い口付けをかわした。
「お前達、どうしたんだ。いつもこっちが目を背けるような激しい口付けを繰り返してたくせに、最近は唇が触れる程度だ。まるで嵐の前の静けさだ」
ミラーとカシオネが顔を合わせる。
「私がエンジェルたちに言ったこと覚えてる?」
「ああ覚えてる。あんな冷ややかなミラーは始めてだったからな。だけど体をはった後だ。仕方のない台詞だろう?」
「ドルドネは優しいね。あの件で私は自分の恐ろしさを知ったわ。危険因子どころか反乱分子よ。それでも生きるのにあがこうと決めた。例えかなわなくても道連れにはするつもり。それぐらいの強い意志をもった発言よ。カシオネはね。そんな私の側で死ぬまで戦うと言ってくれたの。心が重たい。重たい中で結ばれてる。もうお互いを求める必要もないほどに私たちはその日の覚悟をもって待っている」
「ミラー!」
ドルドネが揺さぶる。
「しっかりしろ。その可能性は1%にも満たない。こうしてただ狩りをする日々が続いて、カシオネは錬金術に明け暮れて、時々黒魔術の掃討をして、そのまま引退する日がくるかもしれないんだ。若返りの薬を飲んで仕事を続けるとして100歳まで働くと考えれば70年強の月日が俺たちには残ってる。なのに今そんな覚悟を決めるな。深い淵に沈むな。それこそ闇に足をすくわれるぞ。いつものお前達に戻れ!愛し合い正義を疑わない。生きることに迷わない二人に戻れ!死を、裏切りを、覚悟するな!まだ早すぎる。まだ戻れる。エンジェルたちもさすがに懲りたはずだ。要注意を払って、お前達に接するはずだ。まだ信用を失うな。信じてやれ」
今度はカシオネを揺さぶるドルドネ。
「お前は男だろう。深みに一緒にはまってどうする。抱き上げて、俺たちの元に戻れ。ミラーを守れ。一緒に死ぬ覚悟を今決めてどうする。まだやり直せる。その為の盾となれ、ミラーが見る景色が脅えるものならば目隠しをしてでも導いてやれ。今お前がする覚悟は死ぬことじゃない。生きることだ、生かすことだ。二度と同じ思いをしてミラーが戻れない世界にいっちまうことを止めることだ」
ドルドネがため息をつく。
「ミラーが死に掛けて、きめた覚悟だ。沈みに沈んだところで愛を確認しあったことはわかる。だけどそれは最後の日の覚悟だ。今は普通に戻れ、さっきも言った。1%にも満たないと。もう苦しまなくていいんだよ。そんな秘めたところで愛し合うことはない。俺たちは戦ってるが騎士団とはわけが違うんだ。日々の暮らしまで死に脅えるな。ましてや二人そろって、滅びる覚悟なぞするな。未来に抜け道は沢山ある。光が照らす方へ歩け。そしたらそんな覚悟笑い話の過去になっちまう。ふたりして早まるな。今のお前たちは自殺を決めた恋人同士と変わらないぞ」
「だって私はもう、他人の口付けを受けた」
「それを命令したのは俺だよ、ミラー」
「それでどうにかなったのか?二人の愛を確かめただけに過ぎなかったんじゃないのか?結果としては?」
「そうかもだけど…私は」
「自分を許せないか、相手を許せないか。それでもお前はここに戻ってきている。ミラーが壊れてたのはたった一ヵ月ほどだ。どんなけ苦しかったかはわからねぇ。でも今狩りができる。普通に生活ができてるんだ。エンジェルも馬鹿じゃない。今は黒魔術師掃討からは二人をはずしてる。普通に二人が生活できるようになるまで気遣っている。自分のしたことの重さも背負ってる」
「俺たちは…元に戻れるか?」
「元にもどしてやるのが男のお前の務めだ。カシオネ」
「ともかく帰ろう。錬金術をしなきゃならない」
三人は白魔術師施設に帰っていった。




部屋に帰るともう一狩り、すませたはずのミラーがベッドで横たわっている。
「ミラー」
「この一ヵ月掃討依頼がないと思ったらはずされていたんだね」
「今の俺たちじゃ闇に飲み込まれかねないからな」
紅茶を入れてきてベッドの上で飲む。
「ミラー、一回、俺に本気で抱かせてくれるか?」
「いつも本気じゃなかったの?」
「お前に合わせて手加減はしてやってる」
「何故?急に抱く気になったの?ドルドネの話?」
「それもある。一度でいい本気で抱きたくなった」
「いいけど…それはどちらの準備?」
「両方のだ…本気で犯すから、耐えるな先にいけ。それでも狂える」
それはもう、最初からきつかった口付けだけでいける。頬を叩かれ正気に返ると、そこからはあえぐを通り越しいきっぱなしだった。心臓の鼓動の早さが収まらないうちに次の波がくる。生き絶え絶えにカシオネを感じ続ける。カシオネが入って来てからもいき続ける。四度目に一緒にいけたかと思うと同時に気が遠くなってしまった。目が覚めるとカシオネは服を着ていた。ミラーが
「カシオネ…私…」
「昇りつめて気を失ってた。大分さめちまったが飲め」
と紅茶が差し出される。片手では支えきれずに両手で支えるがまだ震える。こぼすかと思ったが、カシオネが取り上げ口に運ぶ。
「体がまだ感じ続けてる。鼓動もはやいままだ」
「これがカシオネの本気?」
「そうだ、壊れそうだろう」
「うん…」
口に運ばれる紅茶。
「しかもお前の体を知り尽くしてるからな痛みより快楽のが辛いと思うのは始めてだろう?」
「うん…死ぬかと思った」
「抱き殺せる…そこまで身につけた」
「半年間で?」
「ああ…講師が良過ぎたな」
「だけど…狂うなら狂えばいい、死ぬなら死ねばいいと思ってお前を抱いたのは始めてだ。そして最後だよ。俺はは今、満足してるからな。お前の命をもらった」
そう言って頬に口付けをする。それさへ敏感になってた。
「どうしたい。今すぐエンジェル達を殺したいならつきあう」
「それは死にに行くのと同じことよ」
「かまわん。だから抱いた」
「もう一度同じことを言われれば…でも今は信じましょう。ドルドネは1%に満たないと言った」
「それは次はサンドラ達まで敵に回す覚悟か?」
「白魔術師全員をよ」
と静かにミラーは言った。
「わかった」
カシオネもそれだけ言うと紅茶を飲み口移しでミラーに飲ませる。敏感になってる体が震え、鼓動が早くなる。頭を抱えて胸に抱く。鼓動が聞こえてくる。とても静かだ。整えろ、そういわれるとミラーはカシオネの鼓動だけを聞いた。




一旦全てを失う覚悟をした人間が、その輪に再び戻るのには少し時間を要した。最初はサントラ達に次に一緒に仕事をするものにそして通り過ぎる顔しか知らない白魔術師に身構えずに自然に振舞えるようになる。だが前以上に必要以外ミラーはカシオネの側を離れなくなったし、ミラーの笑いは静かで明るさがない。そんな中二人を引き離し、作業をさせようと組んだキャンプはミラーの力の暴走でだいなしになる。暴走を止めようとするが止まらない。
「サンドラが早くエンジェルを呼んできてと言うと」
カシオネが大丈夫だと言って
「風よ暴走する力を止めよ」
暴走する力は止まった。後は震えるミラーだけが残りカシオネが近づき抱きしめる。熱い口付けを交わすとやっと止まる震え。
「今は俺と無理に離すな。まだ滅びる覚悟と生きる覚悟で戦ってる」
「そうみたいね」
とサンドラ。
「前以上にカシオネを必要としてる」
とタッチャ。
「人ってこんなに脆い筈じゃないのに」
とアーデラ。
「それは人それぞれだろう。キャンプは中止にしよう」
とドルドネ。戻ると夕刻だった
「ごめんなさい」
と謝るミラー。
「ミラーが平気じゃなきゃ、やる意味もないキャンプよ」
とタッチャ。
「少し見ててくれ、触れるなよ」
と言って消えるカシオネ。薬を持って戻ってくる精神修正薬だ。
「それ何度も使えないんじゃなかったの?」
と不安な顔をするサンドラ。
「仕方ないだろう。精神バランスが完全に狂ってるんだ」
カシオネの言われた通りに飲み干すミラー。
「私、このまま壊れるのかな」
と静かに笑うミラー。
「壊れても側に居るから、生きてる限り」
と抱き寄せるカシオネ。だがこの前と違っててき面に効く。一人狩りはもちろん、ドルドネとの狩りもこなす。笑顔も少しずつ明るくなっていく。この不安定な状態を繰り返しミラーは三ヶ月ほどに薬を五、六本開けた。何もないところでニコニコ座るミラーにエンジェルが聞く。
「大丈夫なの?」
「大丈夫じゃない、不安定になると薬を欲しがる中毒症状がでている」
エンジェルが見上げる。
「怨んでる?」
「今はそれどころじゃない。ミラーを正常に戻すので精一杯だ」
とカシオネ。この頃になるとカシオネはまた毎晩ミラーを抱いていた。薬のことを忘れさせるのと、精神を安定させるのと両方の為に。カシオネをみつけてやってくるミラー。
「こんにちはエンジェルさん、カシオネに用事?」
と笑うミラー。それはいつもみせてたミラーの笑顔だ。けどちょっとしたことが原因で消えてしまうことをもう周りのものは熟知していた。
「そうよ、ミラー。ミラーは狩りは?」
「今日の分は終わらせたわ。明日の分に取り掛かるか悩み中。掃討依頼の仕事はまださせてもらえないの?」
「今飲んでる薬が飲まなくてすむ様になったらね」
「そっかぁ…力が暴走しちゃうんだよね。飲まないと」
「ゆっくり養生しなさい。責任はこっちにもあるから貴方の生活が支障をきたすようなまねはしないわ」
「エンジェルになんの責任があるの?」
と不思議な顔をするミラー。薬が効いている間はミラーはエンジェルがしたことも忘れている。




そんなある日大きな山で大嵐が渦巻いた。ミラーが行った狩場だ。急いでエンジェルが確認に行く。暴走は止めたが触ろうとすると、また、暴走が始まる。仕方なく放置してトクマを派遣する。と同時にカシオネに連絡する。仕事を放り出してカシオネも向かう。トクマが術を消して呼んでも決して近づかない。
トクマから近づこうとすると暴走が始まる。カシオネがついて暴走を止める。「ミラーおいで」
というと跳んでいって、とうとう狩りでも暴走し始めたことを伝える。
「カシオネお薬頂戴、私何もできなくなる」
「駄目だ投与しすぎてる一年はもう投与できない」
と告げるカシオネ。
「私どうしたらいいのカシオネ」
鳩尾に一発いれるとミラーは気を失った。
「カシオネ、君はミラーの暴走を止めるほどの力があるんだね。普段は錬金術に励んでるから気付かなかったよ」
とトクマ。
「俺はミラーのパートナーだから遅れをとるわけにはいかない。全てが追いつけているわけじゃないがミラーに必要な部分は少なくとも追いつき続けてるつもりだ」
「忘れてるようでも、私達に対する怒りは覚えてるのね触らせてもくれない」
とエンジェル。
「エンジェル、俺から説明するからミラーを白魔術師から抜いてくれ。一人で狩りもできないようじゃ…これ以上続けるのは無理だ」
「そんなこと本人抜きで話しても…」
「本人は薬を飲んでもやりたがる。俺はミラーをこれ以上壊したくないんだ。せめて中毒症状が消えるまで、できるなら精神が安定させるまで休ませたい。復帰はいつでもできるだろう?」
「本気なのか」
「薬を飲んでる時のこいつはあんた達へ言った台詞も忘れてる。戻りたいんだ。本来の自分へ。だけど体がいうこときかない。人と接触できるまで俺の側に置いときたい」




「白魔術師を辞める?私が…」
「ここには俺の伴侶としてそのまま居れる。おまえ自身の心が癒えるまで辞めてほしい。復帰はいつでもできる。だが、薬はお前の体を蝕むばかりだ。頼む、少しでも長い間、俺とカルラナの側に居るために今は耐えてくれ」
「カシオネの側には居られるのね?」
「できる限りの時間はさくから」




「すまない。俺が要らないことを言ったばかりにミラーはつぶれちまった」
とドルドネ。
「そうでもないさ緊迫した覚悟で二人で愛を誓ったとき、あいつは笑える存在じゃなかった。それが今じゃ笑ってる。薬を飲んで戻ったのも元のミラーにだ。決して二人に憎しみを向けたかったわけじゃない」
とカシオネ。
「どうしてるんだ、今?」
「お前らの子供の面倒見てるか、一人のときは錬金術室に来てるよ。ただ俺の後ろで座ってる。何が楽しいかはわからんがな」




「暴走してもいいから、どんな術でもいいし、かかってこい」
とカシオネ。
「光よ人一人を切り刻め」
「闇よ光を打ち消せ。いきなり光か」
「まずかった?」
「いや構わない」
二人の攻防戦が続く昼食を抜いて夕暮れまで。
「はぁ、はぁ、はぁ」
とミラーの息遣いが荒い。
「少し体力を戻したほうがいい。学校にあるグランドを走れ」
「うん」




「トクマさん来てもらってごめん忙しいのに」
「責任は僕にもあるからね。気にしなくていいよ」
「何するのカシオネ」
と不安そうなミラー。
「ただたんに頬にキスするだけだよ」
と笑うトクマ。
「受け入れてごらん、全ての綻びはそこからはじまった」
トクマが近づいてくる。抵抗する手を両手を捕まえて頬にキスするトクマ。両手の力が抜けていく…反対側にキスをして額にキスをする。抵抗は完全に消えていた。
「エンジェルの命令?」
「いや、今日はカシオネの依頼だよ」
「カシオネ、私、全部思い出しちゃったよ?それでいいの?」
「薬が切れる頃だ。思い出すのは想定内だよ。問題はミラー、お前の心だ。大丈夫そうかい?」
「不思議と落ち着いているわ。これ以上されたら自信ないけど」
「同じ失敗をする気はないよ」
「すまなかった。これだけの為に」
「いいんだよ。君達の一度決めた覚悟が解けるなら安いもんだ」
そう言ってトクマは帰って行った。




パン!パン!パン!復帰おめでとう。とみんなの声。ありがとうとミラー。
「正直、もっとかかると思ったがたいしたもんだ」
とドルドネ。
「うちの稼ぎ頭に休まれて、こっちは辛かったけどね」
とサンドラ。
「ごめんね。狩りも掃討もリハビリするから」
とミラーが笑う。
「ミラーならすぐ使える様になるさ」
とアガルス。
「わたしもこのグループに入ったの。属性風でよろしくね」
とタッチャ。
「ミラー、大丈夫だな。無理してるとこないな?」
とカシオネ。
「カシオネ、あの日からどれくらいの月日がたってるの」
「アーデラとタッチャの子供の面倒も見てたろ?月日の感覚ないのか?」
「あまりないの」
「約一年よ。長いような短いような。その半分をカシオネの伴侶として過ごしていたわ」
とサンドラ。
「それはそれで幸せだった気がする。カシオネ凄く優しかった。あんなに優しいカシオネは初めてだった気がする。学生時分でさへ厳しいところのある人だったのに」
「お前が元に戻るなら何でもするさ。戻った今なら俺のものとして我侭もさせてもらう。とりあえずこの場で服でもはぐか」
とカシオネ。
「他人のやってるとこなんて見てらんないわよ。解散、解散」
とサンドラ。ミラーはされるがままに服を脱がされ愛撫を受けていた。














64
http://sns.atgames.jp/diary/25602966




66
http://sns.atgames.jp/diary/25616677