「ミラー!行くなそっちは駄目だ」
「カシオネ、カシオネ!起きて」
「大丈夫?かなりうなされてたよ」
「ミラーがいなくなる夢を見てた。それもたぶん死んで…」
「大丈夫よ。先には死なない。約束でしょう?」
そういうと優しくカシオネを抱きしめるミラー。
「だが死は不可抗力だ。いつ死んでもおかしくない。抱いてもいいかミラー」
「もうじき夜が明けるわよ」
「仕事までには落ち着かせる」
そう言うとミラーの返事も待たないで口付けをするカシオネだった。
「だるそうだな。ミラー」
「あー、うん。朝から求められちゃったから」
「そういうことは口をにごすもんだぞ」
と呆れるドルドネ。
「そっか、ごめん」
「だが、相手の体調を知っとくのは大切なことだ」
増殖してくる茨のつるが襲ってくる。
「風よ大地より生まれし蔦から我らを守れ」
バシバシ蔦が襲ってくるがびくともしない。
「ミラーは次から次へと新しい魔法を覚えるな」
「もう覚える段階は終了してる。その場で組み立ててるだけ」
「そんな器用なことができるのか」
と感心するドルドネ。
「カシオネは子供の頃に、すでにやっていたことよ」
「俺じゃパートナーとして役不足か…」
「ドルドネ、考えるより攻撃。練大地よお前の生みし植物の勢いを止めよを行くわよ」
『大地よお前の生みし植物の勢いを止めよ』
と重複魔法。蔦の動きはぴったり止まった。
「大地よ剣を現せ」
そういうと一定の長さで切って地面に置いていく。ドルドネも真似た。根っこの部分まで切り落とすと
「光よ大地に置かれし蔓を白魔術師施設、処理室に転送せよ」
地面がきらきらひかり切り倒した蔓が沈んでいく。
「いつ見ても呆れたもんだな」
「ドルドネ!こっちに早く走って。炎よ動きし蔦を燃やし尽くせ。光よ二人を結界に包め」
蔦で叩かれるドルドネ。しかし光の結界は多少の衝撃を感じさせるだけで、ミラーの元へドルドネを連れてきた。
「これは…もう再生したのか?」
「そうみたい。時間あるし、どうせなら繰り返しましょうか」
夕刻、帰ってくると転送先でカシオネが待っている。
抱きしめられて
「無事だったか」
とつぶやかれる。
「俺も一緒だ。そうそう簡単にやられたりしないさ」
「そうだな。わかっているんだが…夢見が悪くてな。今日は不安で」
だが騒ぎは夜に起きた。白魔術施設に襲撃が来た。その日は魔法庁の要人たちが集まるパーティが開かれ、エンジェルグループもカグヤグループも出払っていた。必然とサンドラグループが中心となる。中心となるのは黒魔術師たちだったが、普通の魔術師も居る。それは向こうも感じたのだろう。次々倒れていく中、一グループがサンドラたちの前に集まる。光の結界が三重に張られている。普通なら簡単に敗れない…はずが…
「え?」
膝をつくミラー、ばっさりと腹を切られていた。相手は魔法じゃない。剣一本だ。立つと内臓が飛び出してきた。それでもミラーは
「光よ六人に守護結界を10層に張れ。光よ六人の身代わりとなれ」
「剣なら俺が相手だ。大地よ鋭き剣を現せ」
とテルジス。
「光よ一人に加護と祝福を」
そこまでだった。また膝をつくミラー。
「カシオネ、ミラーの回復を!」
「倒さなきゃ…」
と立とうとするミラーをそのまま抱きしめるカシオネ。
「回復が先だ。内臓まで切られてる」
治癒をかけるカシオネ。焦りの色が濃い。内臓を治癒してる間に血があふれ出してる。このままでは…それでも内臓の治癒を終え、腹を塞ぐ治癒をかけ、全体の修復の治癒にかかる。ミラーがもたれてくる。
「情けない。力が抜けていく…」
「当たり前だ。凄い出血なんだ。今、回復するから、耐えろ」
回復を続けるカシオネ。
しばらく治癒を受けてて
「立てそう。終わらせる」
「まだ無理だ」
というカシオネに寄りかかりながら立つ。
「光よ全てを飲み込む結界となし敵に死をもたらせ!」
白魔術師施設が結界に飲み込まれる。敵がどんどん溶けていく。
その中サンドラたちと戦ってた敵は
「トーラ急いでこっちに来い」
と言うとテルジスと戦ってた者が跳んで一歩下がり3人固まる。そうすると玉をパチンと割り…3人は消えてしまった。
「錬金術での移動だ」
とカシオネ。ミラーはそのまま崩れ、気を失う。気がついたときにはサンドラとカシオネとドルドネが回復呪文をかけていた
「生きてるね。皆も?」
「ああ、俺たち五人は無事だ。お前が一番危なかった」
「ミラーの最後の大技で決着は一応ついたけど…」
「何?」
「その中で三人、逃げたわ…ミラーの魔法が効かないなんて始めてよ」
「三人…黒魔術師じゃなかった」
「よくあの状態で見てたわね…その通りよ黒魔術師じゃないわ」
「ともかくもう少し治癒魔法が必要だ。寝てろ」
この騒ぎで30人以上が死んだ。向こうの残りが三人なら上出来だが、その三人が問題だった。
「ミラーの結界をあっさりと切る魔法の剣、光の最高魔法に抵抗できる能力、そして白魔術師施設への襲撃」
貴方達はどう思う。
「中の一人は恐らく錬金術師だ。なら、剣も身を守ったアイテムも心当たりがある」
とカシオネ。
「光を超えるアイテムが作れるの?」
とエンジェル。
「光の属性を持つ者も、闇の属性を持つ者も黒魔術師と白魔術師だけじゃない。その両方の魂を封じれば魔術の全く効かないアイテムを作ることができる…」
「人の命が錬金術に使われるの?」
と驚くサンドラ。
「そうだ。もちろん禁術だし、作るのも難しいが作れる」
「どんなアイテムなのカシオネ?」
「…あまり言いたくないんだが、魔封じの剣と賢者の石だよ」
「魔封じの剣はともかく賢者の石は聖石じゃない」
「そうだよあの石は命を奪って作られる…聖石なんて謳われるもんじゃない」
「一人は剣士だ。剣術はサンドラ以外使える。だがミラーは不意打ちでも食らった。恐らく交えても勝てないだろう。俺も一人じゃ勝てなかった。だが二、三人なら勝てる」
とテルジス。
「錬金術師は俺がどうにかするしかないだろうな」
「残る一人の能力が不明よ。何者なのか…」
「貴方達が動く必要はないわ。私たちがどうにかする」
とエンジェル。
「しかし、術が全く効かないんだぞ」
「その為の錬金術師でしょう。どうにかならないの?」
しばらく考えるカシオネ…
「今の俺に対抗策はないが…家にならある…精霊の剣は魔封じの剣と対当する剣だ。命石の剣は賢者の石を破壊する。作り手の封じの石は錬金術を無効にするが、エンジェルたちの体術じゃ無理だ。騎士団に任せたほうがいい。そして最後の残りの能力が解らないのは恐らく命取りの息吹の使い手だろう…息吹ひとつで魂を奪う錬金術殺しの秘薬だ。殺せる人数は錬金術師の能力で決まる。近づかないことだ。連れ去られたら死んで迎えに行くしかない。ようするに、誰かの命と引き換えなら、連れ戻せるかもしれない」
重々しくカシオネは言った。
「家からそのアイテムを持ち出せるの?」
「わからない。俺は家を出た者だ…貸してくれるか…」
「とにかく大至急、家から借りてきて。私は騎士団に話をつけてくる。でも、相手の居場所がわからないのよね」
「それは私がわかる」
とミラー。
「ミラー、まだ寝てなきゃ駄目じゃない」
「うん、だけど戦うのでしょう?」
といいながら座り込む。
「ほら、まだろくに立てもしないのに来るからだ。医務室に戻してくる」
とカシオネはミラーを抱いて消えた。
それから三日後、カシオネは家から宝物を持ち出した。
「よく三日で説得できたわね」
サンドラたちはエンジェルに代わって魔法庁勤務をしている。
「娘はフォレスト家の人間として預かる約束で…将来を憎むなら父親を憎むといい」
「ミラーには?」
「大丈夫よって笑ってた」
と複雑な顔をするカシオネ。
「こっちも話はついてる。武術系の精鋭部隊が動く」
とトワイヤル。
「エンジェル、私達も行きましょう」
「術は効かないんじゃ…」
「補助魔法と治癒魔法は使える」
「そうね。行きましょうか」
「足手まといになるだけだ。やめとけ」
「同じ失敗はしないから」
「本気かミラー」
「できる限りの治癒玉と茨玉をそれから火炎玉用意できる?」
「それなら在庫はあるが、何考えてるミラー」
「簡単よ三人さへ、片付ければ戦える。逆に言えば三人以外は私たちが受け持つ」
「で宝物は一本ずつか?」
「いや全部借りてきた。精霊の剣三本、命石の剣四本、作り手の封じの石10個だ」
「それだけあれば、どうにかなるだろう」
「ミラー敵は何処にいる」
とトワイヤル。
「風よ覚えし三人の居場所へ導け」
騎士団とエンジェルグループ、サンドラグループが移動する。いきなりの来客に、一瞬混乱する敵。その一瞬を騎士団は逃さなかった。次々倒していく騎士団。エンジェルたちも後方で、戸惑ってる者たちの心臓を石に変えていく。残ったのはやはり三人だ。剣を持って駆けてくる者を三人で封じる騎士団。切りあいが始まった。
錬金術師が玉を潰す。だが反応をしない。作り手の封じの石10個を持った騎士団に囲まれている。あっさりと彼は殺されてしまった。
そして得体の知れない相手と対峙するトワイヤル。近づかないことには倒せないがカシオネの言うとおりならば、近づくのは危険だ。後ろから矢が飛んで来る。見事に避ける敵。意を決してトワイヤルは切りかかった。だが心臓を貫くと同時に吐息がかかる。トワイヤルはすべるように倒れていった。それを見たエンジェルが短剣を持ち出し、自分の胸に突き刺す。
「ここは何処だ?」
とトワイヤル。
「生死の境よ、それ以上向こうに行かないであなたは戻れるはずよトワイヤル。出口はあっち」
と光の先をさす。
「わかった、戻ろうエンジェル」
「私は無理みたい。剣を胸を突き刺したから…」
「なんて馬鹿なことを…」
トワイヤルはエンジェルに近づき、抱き上げようとするが、抱き上げれない。
「お前のいない世界に戻って何の意味がある…」
そう言うと熱い、とても熱い口付けを交わし、エンジェルを押し倒した。
「トワイヤル、戻れなくなる」
「それがどうした。何年ぐらい抱いていない…」
そう言うと首筋に口づけをしていく。
「12年かな」
後は、ただお互い黙って抱擁しあう。二人だけの世界でお互いだけを感じ、エンジェルは相手を受け入れる。
「きついな…お前を置いていくのか俺は…」
「そうして…貴方の存在は世界でまだ必要よ」
エンジェルの中に入ったものが激しくなっていく。この人に抱かれるのも最後だ。二人は一緒に頂点に達した。
「きびしいな…俺も若返りの魔法が必要な年齢か…」
「くすっ、アレクシラがかけてくれるわ、早く戻って…」
もう一度抱き上げるトワイヤル。今度は持ち上がった。
「一緒に帰るぞ。エンジェル」
「何故?帰れるの私」
「現世でおまえを抱く…お互い、我慢はもういいだろう」
そういうと抱いたまま、光に向かって歩きだした。
「早く白魔術師施設の医務室に二人を」とアレクシラ
巨漢の騎士がトワイヤルを抱き上げ、エンジェルはガリュウが抱き上げる。一同は一度、白魔術施設に移動した。医務室でトワイヤルの診断をする。まだ息はある眠っているだけのように感じた。だが少しずつ心臓の音がゆっくりになっていっている。エンジェルは心臓をかすめていた。急なことで狙いをはずしたのだろう。急いで心臓に治癒をかけると心臓が止まる。
「アガルス心臓のマッサージをお願い」
「塞いだばかりで大丈夫か?」
「わかんない。でも早く」
「こっちも心臓が止まった」
とタリューマ。ミラーがかけつけて、心臓マッサージを始める。
「俺が変わろう」
とカシオネ。二人の心臓は程なく動き出した
「トワイヤルさんはこのままでも大丈夫だろう。どんどん心臓の音がしっかりしてきている」
エンジェルは相変わらず危険な状態だが、アレクシラとカエデとタリューマが治癒をかけている。カシオネが治癒玉を割りかける。そして治癒を始めて1時間後、二人は同時に目を覚ました。トワイヤルは起きるとエンジエルの元へ行く。二人は熱い、とても熱い口付けを交わしあう。
「エンジェルはまだ動かせる状態じゃないわよ」
とアレクシラ。
「わかっている。ただ一緒に寝かせてくれ」
そう言うとエンジェルのベッドに滑り込む。エンジェルは笑ってトワイヤルにしがみつく。
「あーアレクシラ、エンジェルの治療が終わったら、俺も若返りの魔法が欲しい」
「…今まで歳の事なんて気にしなかったのに何故」
「エンジェルを愛したい。それには俺も歳だ」
「二人とも50でしょう。充分間に合うわよ」
「そうだな」
そういうと、静かにトワイヤルは眠りについた。
二人が動き出したのは、それから三日後だ。まだ医務室にいたほうがいいというアレクシラの注意も聞かず、エンジェルの自室に移動してしまった。サンドラが後処理や騎士団への報酬など相談に行こうとするとアレクシラが止める。
「今、二人は愛し合ってる。でてくるまで待ってあげて」
カシオネが借りたものを実家に返しに行く。帰って来るとミラーが狩りから戻って来た。
「ミラーも気が早い。死に掛けてたんだぞ。医務室でも無理をして、もう狩りか?」
「平気よ。元気で丈夫なのは取り得だもん」
「ふーっ、しょうのない奴だ。カルラナのやつ、フォレスト家の錬金術師にお前はなるんだぞと話したら、なると笑った。まだ、かたことしか喋れないのにな」
そしてミラーを急に抱き上げるとベッドに運び。
「狩する元気があるならやらせろ。ほんとに死ぬかと不安だった」
「先には死なない約束でしょう?」
「なにが約束だ。死を覚悟したくせに…」
「ばれてた?」
「当たり前だ。馬鹿。何年一緒に居ると思う」
そういうと、激しい口付けをしてくる。
カシオネの愛撫を感じながらミラーは
「ごめんね」
とだけ言った。カシオネの愛撫がどんどん激しくなる。後はもうまともに会話ができない。感じる体をただ耐えていた。カシオネが入ってきて一緒に達する。たがカシオネはそれでは終わらない。敏感になった部分をさらに愛撫していく。ミラーはもうあえぐことしかできなくなっていた。
目的はわからないが、白魔術師を敵に回す者がいたらしい。
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