勝手がお好き!!~徒然満載

ゲーム依存症の創作好き

さな02

それは正月もすぎ、月半ばの頃だった。外ではドラム缶に薪をくべ燃やしていたがさほど温かみの役にはたたない。籐蛇芳樹(とうだよしき)の連れという立場だけでなにもしていないさなが火にあたることは許されなかった。芳樹自身も火にはあたらない。火にあたっている先頭は継(つぐ)で、あたっていていい人間も時間も彼が決めていた。芳樹は喧嘩は強い。だが汚いことには基本手をださない。笑ってみているだけだ。麻薬も暴力も強姦もその結果死んだ人間の後始末も継が指示する。暴走にでかける時も芳樹は一人ここに残る。象徴みたいな存在で実績は継の方が大きいし、ついていく者も継の方につく者が多い。それでも芳樹の一声は絶大だ。もしも継が芳樹より強ければ芳樹はここには要られなかったろう。そして今日も芳樹と継は喧嘩をしていた。他意はない継の
「一発相手しな」
そんな簡単な一言ではじまった。最初は継から申し入れるのでもっとどろどろとした喧嘩になると思った。だが芳樹は圧倒的に強かった。継の殴りも蹴りもかすりもしない。なのに芳樹は一発一蹴りで急所を潰してく。五分後にはだれかか継に鉄パイプを放り投げるがそんなもの振り回しても変わらずに冷静で、すきを見て鉄パイプを受け止めるとひっぱり取り上げ胸を突く。それで継は倒れて終わりだった。毎回似たようなもんだ。でも継は諦めない。勝てば事実上のリーダーだ。芳樹の存在価値などなくなる。このグループの中で継だけが本気で芳樹を表の世界へ帰したがっていた。穏便にことなく運ぶには継が事実上の絶対的な存在として君臨しないことには手を汚してない芳樹を何事もなく表の世界に帰すのは不可能だったろう。だが芳樹は圧倒的に強かった。集団暴力の怖さを知らないさなはもしかしたら全員でかかられても勝てるのではないかしらと思うほどだった。




芳樹のアパートに帰るとやっと暖を取れる。ヒーターを入れ暖かいものを飲む。芳樹は寒くなってくるとさなを抱き込む癖がついた。ヒーターの前で芳樹に抱かれてコーヒーを飲む。ここ二ヶ月ほど習慣になっていることだ。そして温まってくると芳樹はさなを愛撫し始める。今は薬を抜いていて生理が来ているので洋服を脱がされることはなかったが首と胸を中心に責めたてられる。さなはそれだけでいってしまえるほど芳樹の指先や舌に敏感になっていた。チャイムが鳴る。大抵昼間だけしか仕事をしていないのは承知しているはずなのだが、たまに我慢しきれずに夜中に訪問してくる女も居る。今日もその類だと思った。
「さな食器洗っとけ」
「うん」
扉を開けると三人の背広を着た男たちが立っていた。一人が
「ここの管理人の人がね。親御さんから君をあずかる契約はしたが半年以上、未成年の小さな女の子が出入りするようになって一緒に暮らしてるようだという話でね。それが本当ならおじさんたちはその子をあずからなきゃいけないんだがどうかね?アパートの契約は君一人のはずなんだが…」
芳樹は中央で喋っている男に鳩尾を一発いれると両端に居た男達の頭を捕えて頭と頭をぶつける。
「さな!はやく来い出かけるぞ!とりあえず逃げるんだ」
さなが二人分のコートを持って慌てて玄関に来る。呻いている男達を尻目に急いで駆け足で移動する。
「よしき、どこへ向ってるの?」
「とりあえず継の所だ。あそこは出入りして様がしてまいが誰も何も言わない」




「継、アパートの規約に引っかかって児童相談所の人間が来た。片付くまで住まわせてくれ」
「さなを預かっとけば済むことじゃないか?」
「一人置いてけばお前は必ず食うだろうが。さなは俺の女だ」
「ふん。よくそこまで惚れたよな。いままでのは適当に分けたり下したりしたのにさ。桂木!二人に暖をとらせて暖かい食べ物を与えろ。俺はワインでもよこせ」
「かしこまりました。こちらへ」
食事をとり三人ともワインを飲みながら話をする。さなは初めての経験だが随分と飲みやすいので高いお酒なんだろうなと思う。しかも執事つき召使つきのお屋敷。継がお坊ちゃまなのを知って少しびっくりしてた。
「結局、両方の両親に話をつけてくるしかないか」
「未成年だ。それしかないだろう。ついでに返せるものなら返して来い。さなは不良には向かない。お前もだが…お前はもう間に合わないだろう。することしちまってるし、だがさなは手出しはしてない。目さへ逸らす。親元に帰すのが一番だ。結果、児童養護施設にいれられようがな。まだやり直せる」
芳樹がひどく辛そうな顔をする。さなも不安そうな声で
「離さないでよしきのそばがいい」
芳樹は抱き寄せて
「義務教育だけは受けて来い」
「よしきとはどうなっちゃうの?私よしきに抱かれてるんだよ。もう離れられないよ」
「忘れろさな。一年夢見てたみたいなもんだ」
「じゃあ居場所を教えて今のアパートの住所、刑務所に入ればそこのヤクザになればその屋敷の、成人して一人暮らしが確定したなら新しいアパートの空封筒でいいから住所をのっけて送って」
「だから!!さな俺たちは終わりなんだ!俺の居場所を知る必要は無い!とにかくお互いの両親の元へ行こう。もしかしたら三年後には一緒に居られるかもしれない」
継ぐが口を開いた
「甘いな。さなの家はあれっきりだぜ?本当なら児童相談所がもっと早く動いてるはずだ。最悪を覚悟していけ」




さなの両親は露骨に嫌な顔をした。そしてあれから誰の子ともわからず中絶してお互いは上手くいかず家庭内別居が続いていて、さなの死亡届けはだしてあるから。さなの戸籍はもうないことを告げた。全てを滅茶苦茶にした悪魔だといいそれ以上居れば殺されかねない勢いで追い出された。芳樹の親もさすがにその親のやり方には渋い顔をしたが所詮は自業自得だと言われ成人するまで仮親になることも反対され、ましてや一緒に暮らしていくことなどゆるしてはくれなかった。アパートに戻ると三日後には同じ三人組が来てその両親の話と戸籍の話をすると戸籍は新規で作り直そうと。施設に入り二度と二人は会わない事を条件に過去を不問にするとでた。芳樹たちは殺しや麻薬までやっている。問いただされたらただではすまなかった。よしきを守るためだけにさなは全て承諾した。




学校と施設は地獄だった。一年学校も通わず不良してたのだからやりまくってたんだろう?と問われそんなことないと否定しても大勢で攻めてきた。
「いや、離して、私身売りなんかしなかった。リーダーの女だもん。それだけだった。男の人の相手なんてしてない。まわされた事なんてない。どいて!離して」
「でも見てたんだよな止めもせずに体売ったり強姦されたりするとこ。お仕置きだよな。災いは自分に返る事知ってもらわなきゃなー。みんなもそう思うだろう!」
「おう。そいつは便所だ。今日からは俺たちの便所だ!!」
「うそ…許して」
さなは逃げる。だがあっさり捕まる。何本もの手が衣類をはがし真っ裸にする。まさしく便所でさなは始めて強姦された。口を男根で塞がれ、まんことアナルを一遍に犯される人が多すぎて時には膣に二本まとめてはいってくることもある。姿勢も滅茶苦茶で両手にも男のそれを握らされ胸もだれかが舐めている。中でも外でも射精され無茶な体の動きに体の自由が効かなくなる。おしっこもかけられ、飲まされ暗くなり捨て帰られた時さなは意識だけで動けず一晩そのまま明かす。だがそれははじまりだった。一人の時もあれば10人を超えるときもある。四、五人位の時が一番多かった。トイレはもちろん教室でも校庭でも屋上でも寮でも暇さへあれば…いや授業をサボってでさへ犯された。時には心臓が止まり救急車で運ばれ、それを機に先生に相談すれば教師からも複数強姦にあい助けてくれるものなど誰も居なかった。避妊薬を抜けるときがない。おかげで体調もおかしい。そもそも動けぬほど犯されては薬を飲む余裕などなかった。一年とたたないうちに四度妊娠し流産させられる。四度目に流産で救急車に運ばれたときはもう子供は産めないと告知もされた。とにかく凌ぐので必死だった。楽になりたくって麻薬に手を出した。入手方法は芳樹たちとつるんでいる時に覚えた。麻薬を買うために体を売った。芳樹からは連絡は来ない。もう来ない方がいい。わたしはこのまま壊れていくだけなのだから…




「いいでしょ?お得意なんだから一袋くらい分けてくれたって。ねぇ今日中に稼いで明日は正式に買うからさーじゃなきゃ他の組のお得意になっちゃうよぉ」
「馬鹿言え、こっちが兄貴に目玉を食らうんだよ。金がなきゃ渡せねぇ」
「さな!…さなだよな?随分変わって見えるけど年恰好がそうだしお前の顔を忘れるわけが無い…さなだよな?こんなヤクザの組屋敷で何してるんだよ。養護学校でて今高校生のはずだろうが!!」
「なんだ?芳樹の知り合いか?二万よこせこいつの薬代だ」
「誰が麻薬なんかやらせるか!止めさせる。ひっこめろ」
「無理だ芳樹。この女、さなってのが本名か?雪はいくとこまでいっちまってる急激に止めさせたら死ぬぞ」
「くっ、だれがお前に麻薬なんかを…」
「自分から始めた」
「なんで!薬の怖さはしってるだろうが!」
「薬が感覚を麻痺させ快楽をくれることも知ってる」
「だったら何故!」
「だからだよ。一番会いたくない人に逢っちゃった。私薬買う組変えるわ。こいつがいたらやりにくい」
「ま、待てよ。それもこまる一袋やるから芳樹とは話をしとくから組は変えないでくれよ。なぁ?」
「本当よ。こいつが顔見せたら帰るからね?」
そういうと雪と呼ばれたさなは帰って行った。
「雪とは付き合いが長いのか芳樹?」
「小六の時愛し合ってた。一緒に暮らしてた。義務教育は受けとけって突き放した1年のつきあいだった」
「なら俺のが長いな、お前が組みに入る前だ。最初は中一の女の子が身売りした金で薬を買いにきた。死んでもいいから強姦が快楽に変わるほどの薬が欲しいってな。五年もたねえぞって言ったら笑って義務教育だけは終わるなら上等だって、それからずっと買いに来る。ぽつぽつ聞き出した話じゃ動けなくなるほどまわされるらしい便所扱いだって流産で子供も埋めないし、汚れるだけ汚れつくしたからもう充分だっていうんだ。中学を卒業した雪は今でも4P以上の客しかとらねぇ。最低ライン30万だ。中学卒業と共に施設は飛び出したらしい。そしてもう末期に入ってる。記憶が飛んじまったり、気が触れた言動をする。そろそろ捨て時の女なんだ」
「俺にくれ。もう終わりの女なんだろう?狂っててもかまわない。そんな施設に入れたなら俺の責任だ。俺が愛した女ならちゃんと看取りたい」
「賭けだが薬を少しずつ減らしていけ、間に合うかわからんが間に合えばたすかる。命はな。どんな障害が残るかはわかんないぜ」




「なんで、こいつがいるのよ。もう薬は買わないようにするわよ」
「引き際なんだよ。雪お前は限界だこれ以上売るとこっちが殺したことになる。お前に売るとしたらもっとやばいところの組織くらいなもんだ」
「じゃあ教えてよ。そこに買いにいくから」
「駄目ださな。今日から薬は俺が与える。すこしずつ減らすんだそれでも生きられる確立は低いそうだ。なら生きている時間を俺にくれ。もう一度やり直すチャンスをくれ…さな…」
「冗談じゃないそれこそ狂うわ。あんたがさなと呼んだおんなはもういないのよ…」
「罰が当たったんだ。死ぬほどの強姦を命じたことなら何度となくある。さなは俺の罪を背負ったんだ。俺が突き放したのを憎んでるのか?連絡しなかったのを怒ってるのか?汚れた自分を触れさすのを怖がってるのか?」
最後の言葉にさなはびくりと反応する。芳樹がため息をつく。
「なら罰をうけろ。その体に刺青を彫れ。極道から抜けられなくなる」
「そんなの罰にもならないわ。どうせ半年もない命なのに」
「そして毎日俺に抱かれるんだ。さな、お前にとって一番の苦しみだろう」
「冗談でしょう?なんだって今更にあんたに抱かれなきゃならないのよ…」
「簡単だ今でも俺はさなが好きだ。たとえ体と心がどう壊れていこうとも」




「いや、抱かれるのだけはいや。あんたにだけはいやなの」
それでもほぼ無理やりさなを犯す。そこには昔の従順なさなはいなかった。
「やーやめてー、ひー、いやよ、ゆるして、くるしめないで、だ、だれかたすけてー」
薬が切れると
「くすり、くすり頂戴。苦しい楽になりたい薬、お願いあんたが管理してるって頂戴よ薬」
「駄目だ早すぎる、タイムリミットは半年だ薬抜きも急激なスピードになる死との賭けだ」
「なら薬頂戴よ。楽に笑顔で死なせてよ」
「だめだ苦しんでも、俺の腕の中で大人しくだかれてたさなに戻ってしんでいってもらう」
「そんなの無理だよ。お互い苦しんで終わるだけだよ」
「くるしんでいいんだ。それは俺に与えられた罰だから」
さなを抱きしめる芳樹。
「何があっても手放すんじゃなかった」
「……」




「よしき…お薬…」
「今日から半分だ。耐えろ」
「もう、うごく元気も無いよ、寒気と吐き気と眩暈と幻覚で…代わりによしきを思い出した」
「ああ、やっと名前で呼ばれるようになった」
「今日は刺青完成するんだよね」
「それより抱くぞ」
途中で吐いて芳樹が後片付けをしていると
「どんなに優しく抱かれても駄目、体が心が拒絶する…」
「あせるな。初日はころされそうな勢いで抵抗したんだ。それに比べればましになってる」
「お薬足りてないよ…全然楽にならない。寝たきりで動けないよ」
「賭けだと言ったろう。半年で薬抜くんだ。これから先苦しみだけだ」




「あーあー…よしき」
「いい子だもう一周歩いておいで」
「寝たきりで失った健康とまともな言葉がしゃべれないだけか?」
「いや中学時代は綺麗さっぱり忘れてる。俺に話したとたん記憶はまかせたとぱかりにな」
「そっか。それで俺にも会釈程度なんだな」
「最初の出会いだけ鮮明に覚えてる。森で迷った頃の記憶をな。あとは医者にもそのレベルの人間に薬絶ちさせるのは不可能に近いし死んででおかしくないそうだから奇跡だな。今は間違いなく俺を愛してる。それだけが救いだな。やり直すさ」
「よしき…あーあー」
そう言って唇を合わせてくる。それに応える芳樹。
「雛型さんだ。さなもずっと世話になってたんだよ。様子を見に来てくれた」
「あー、あーあ…り…きゃーきゃーきゃー」
芳樹が後ろから抱き込む
「無理にしゃべらなくていい。さな、いいから。兄貴驚かせてすまない」
それでもさなは現実を一つ一つ受け止め記憶もひとつひとつ思い出した。組長から婚約の許しがでるのは10年かかった。さなは静かな物腰の女性に変貌していた。




「芳樹、遅れるわよ。継は気が短いんだから早く行かないと」
「ずっと俺のOBを引き継いだ仲間がやっと引退するらしくってな。祝いに行ってくる」
二人は寄り添ってでていった。継のもとへ行くと
「芳樹、女をつく…さなか化粧と痩せすぎで自信がないがさなだなそいつ。何のために別れたヤクザの女にしちまったら最悪だろうが」
「さなには戸籍がなかったんだ。それは作ってくれるとは言ってたがそーゆやつの吹きだめみたいな施設に入れられてヤクザにはいるより最悪を見てきたんだよさなは。俺はなにがあっても手放すべきじゃなかったんだ」
「最悪の施設で受けるって言うと集団強姦か。俺たちがやってたような…」
「ああ、それを毎日味わってた。動けなくって薬も飲めずに妊娠し、流産させられ子供も生めなくなって何度も何度も死掛けては病院行きだ。それで麻薬に溺れた。俺が見つけたときは、もう末期で今この状態は奇跡だよ。組で事務系の仕事している。結局そんな3年で学は無いがこいつは器用でな。教えたことはすぐ身につける。もう足抜けできないほど組織の金や物めぐりを知ってる。ついこないだ妊娠させて…生めなくなっても妊娠はするんだな…死んでも生むか堕胎するかで大喧嘩だ。結局無理やり卵巣と子宮を摘出した。こいつはその3年で女としては使い物にならなくなってる。ゆるゆるのがばがばで締まる感覚も麻痺しててほとんど感じない。いくこともない。何人もの男に犯されれば強姦されている感覚がこいつを唯一いく感覚まで持ち上げる。薬をつかってやっとな。俺が抱いたんじゃ駄目なんだ。それでも俺に抱かれる。俺にしか抱かれない。薬でも死にかけた。そばで調教するしか生かす方法が見つからなかったからヤクザに落とした。薬漬けで売春婦してるよりはましだろう。さなの幸せは家を失ったときからないのさ」
「随分と大人びた化粧のせいもあるだろうが苦労したんだな」
「それもあるけど12歳よ。それが今じゃ27歳だわ大人びて当たり前。継はこれからどうするの?」
「いよいよ日本じゃやばくなってきてな。始終刑事が張り込んでる。海外にとんずらするつもりだ。イタリアで
銃を教えてくれるって言う知り合いをみつけてな銃のスキルを身につける。喧嘩じゃ芳樹には勝てなかったからな。それは今でもかわらんだろう」
「まぁほとぼりさめたらいつか三人で酒でも飲もう」
「四人だな俺にも本気な奴が出来た」
「それはおめでとう。それで引退なのね」
「ああ刑務所に入ったら終わりだからな」
「継は慎重だから大丈夫よ。悪いことは一通りやったのだろうけど、もう気は済んだでしょう?」
「全くだな。お前こそできるなら真っ当にもう暮らせよ」
「過去は消えないぜ?それでもそれなりに生き抜くさ」
「それじゃ」
「ああ、またな」




「ねぇ、いいの私で?抱いてても気持ちよくない。子供も産めない。少しくらい事務の仕事が出来たって芳樹はもう幹部入りしようとしているのよ?」
「抱きたいだけなら女が他に居る。別にお前だけじゃない。でも愛したいのはお前だけだ。12歳の頃を思い出せよ。必死で俺にしがみついてた。滅茶苦茶にされてもただついて来たんだお前は」
「だけど私は27歳よ。他の男の手で体はもとにもどらないほど無茶苦茶にされて子供も産めない。一途だった心は離れてるわ。しがみつくこともない」
「さや、それはお前のせいじゃない。一度捨てた俺が悪いんだ。どんな手でも引きとめてれば、あの地点でこの組の親分に頭下げてればお前はそうならずに済んだ。表の世界に未練を残した俺の身勝手だ」
「芳樹いいか?さなもついてこい」
「幹部入りの条件がでた。大飯二の兄貴が東のとやりあって一人殺してきた。雑魚だ。大飯二の兄貴をむしょに入れるわけにはいかねぇ。お前、出頭しろヤクザ同士しかも向こうのが性質悪い。10年はくらわねえだろう。でてきたらめでたく幹部だ」
「何よそれ。身代わりで10年後に幹部?芳樹は喧嘩の腕っぷしだけでのし上がったのよ。今すぐ幹部になれるわ」
「まだ若すぎる。10年後なら丁度いい。寂しいなら相手してやるぜ?」
「さなに手を出したら出てきてから触れた奴片っ端殺すぞ。条件は受けた。さな10年耐えろ」
「無理よ狂うわ。私を支えてるのは芳樹よ…」
「そしたら狂ったお前を抱くよ…組にお前は必要不可欠だ。酷い目にはあわん」




「さな、この仕事ぶりは何だ。全くの役に立たん。遅いしミスだらけだ。お前の価値はそれしかない組を放り出されたいのか?」
「……好きにして。ここには芳樹がいない…」
「芳樹はここに戻って来るんだぞ?仕事の役に立たなきゃ下っ端の下の始末でもしやがれ」
「芳樹も今更私に体を求めてないわよ。滅茶苦茶だもん他の者も嫌がるわ…でていくわよ…」
「そーゆ訳にはいかないんだよお前は知りすぎてる。薬中で殺すか強姦で殺すかして放り出すしか」
「そんなことしたら帰って来た時、芳樹が暴走するぞ。使えねえものはしかたない休ませろ」
「大飯二の兄貴…組長お見苦しいとこすいません!!」
「仕事自体はできる子なのだろう。今が一番辛いときだ。毎日手紙を書け。許されとる。月1回の面会にも顔をだせ。今はそれで凌ぐんだ。七年などあっと言う間だ。執行がつけば五年ででてくるかもしれん。耐え忍べ。時間はいくらかかってもかまわん。ミスだけは無くせ。仕事に時間がかかるならワシの家を使えこことつなぎ間だから寝るだけでいいようにする。一部屋用意させよう」
「組長にそこまでご迷惑はかけれません。芳樹には申し訳なかったと…」
「死ぬ気か?ワシには娘がおらん。親と思っていい。人生の半分は親無しで生きてきたのだろう。ワシの言ったこと反復できるな?」
「仕事をこなすこと。手紙を書くこと。面会に行くこと。組長の自宅で生活すること」
「余計なことは考えるな。ワシの言うことに逆らうな。わかったな」
「はい。甘えさせていただきます」




「よくもまず毎日毎日苦しみや愛しさを書き連ねるものだな。苦しんでるかと切なくって読まない日もあるぞ」
「ごめんなさい。書かないほうがいい?」
「いや、手紙が来るうちはさなは俺のもんだ。それがよくわかる。書けよ、何があったかどんなこと思ったか、苦しみのありったけを書いてよこせよ」
そういうと頭を抱きしめる。
「組長がよくしてくれてるらしいな。よかったよ」
「三つで交通事故で死んだ娘が生きてれば私と同じ年なんだって」
「そっか…つらい思いさせてるな。俺は覚悟の上だが本当にすまない」
「全くよ。でてきたら私は34歳よ。いいおばさんだわ」
「その分俺も歳を食ってるさ」




「芳樹」
「なんだぁ。幹部の出所にお前一人か?」
「組長が気を効かせてくれて明日朝一番に組に出向けと伝えなさいって」
「今夜は二人で過ごせってことか」
そう言うと口付けをする。深く深く。お互い久しぶりすぎて気が遠くなりそうな口付けだった。
「はふっ」
そう一言声が洩れると身震いをするさな。そのさなを見て芳樹が言う。
「お前…感じてるのか?俺の口付けに…居ない間、誰とも交えてないな?」
「口付け一つ交わしてないわ」
「ラブホ行くぞ。お前の感覚の変化と体の具合をみたい」
「ボロボロなのは変わりないわよ。女としては役に立たない」
「それは俺が決めるさな。お前いま少し反応を確実にしていた」
やっぱり口付けで体が熱くなる。絡む舌が遠慮がちに応えてくる。微熱を帯びて我をわすれていく感覚がある。確実にさなは芳樹を感じていた。耳にかかる吐息と触れる唇に微妙に震える体。思わずしがみつく。
「ほら、やっぱり感じてる。毎日書き続けた手紙が俺への思いを呼び覚ましたんだ。過去の歪みを修復始めたんだろう」
「でも体は…芳樹…怖い」
「まかせとけ。大丈夫だから」
実際、滅茶苦茶になった体が手術もなしに元に戻っている訳がなかった。でも長いこと休めた体は少し締まりを取り戻していた。それでも三年犯された跡の消えることのない体だったがお互いの心がそれを乗り越えた。実に30年ぶり以上の年月を経て二人は再び一緒にいった。二人して一緒に流す涙。抱き合いながら無言で泣いていた。
「何も反応しなかった体がこれだけ感じるようになってる。もう大丈夫だよ。さな」
「でも私の体は男を喜ばせる力はもうない。そのうえ歳もとったわ」
「他に誰を喜ばすつもりだ?俺にさへ反応すればいい。充分だろう傷は癒えなくても心は癒えはじめた。帰ろう組へ。お前を極道にしちまったことだけが俺の後悔だが死ぬことにまっしぐらだった売春婦よりは何倍もましさ。これ以上不幸にはさせないから…ついて来てくれ」
「うん」
さなが笑う。一瞬小学生に戻ったかと錯覚した芳樹だった。過去には戻れない、なら突き進むだけだ。今度こそ死ぬまで手放さない。心に誓うのだった。