勝手がお好き!!~徒然満載

ゲーム依存症の創作好き

魔法使いになりたくて 50

二人は休みをとってカシオネの家にきていた。




「そういう訳で俺たちには子供はできない。早すぎるけど確定してしまった事実なんだ」
とカシオネ。
「そっか…末っ子のお前が一番錬金術を好きだった。楽しみにしてたんだが…別れる気はないのだろう?」
「ない…それくらいならミラーを殺して俺も死ぬ」
「なら、仕方ないだろう。錬金術をしに来たのだろう行って来い」
「ミラー行って来る。またせてごめん」




カシオネが行ってから
「本当に申し訳ございませんでした」
と頭を下げるミラー。
「人間ってだけでも最悪なのに…」
「光の術者は皆苦しむ。お前さんだけじゃない。責めないことだ。カシオネはミラーを選んだ。その事実だけ受け止めていきなされ」
と父。
「はい、お茶」
と母が差し出す。今にも荷物が倒れてきそうな荷物だらけの部屋で、ここが一番綺麗だという。ミラーはカシオネがいつも綺麗にしているのを知っているのでこの家の荷物の多さが気になっていた。
「ありがとうございます。この家の荷物…いらない物はないのですか」
「普通のものなら気になるよね。でも錬金術書に材料、魔法の研究書物とできあがった薬、入らない物は何一つないのよ。どうしても家は散らかっちゃってね」
「そうですか」
「きになるかい?」
「いえ、カシオネは綺麗にしてるから不思議に思って」
「白魔術施設とじゃ作ってる種類も数も違うのよ。家に保管しといたほうがいいものもあるしなかなかね。それにカシオネは綺麗好きだから」
「もうひとつカシオネが一番錬金術を好きだったって言ってましたよね。私はカシオネの未来を潰してしまったのかな?」
それには父が答えた。
「白魔術師施設でも錬金術をやっとるのだろう。潰したことにはならん。フォレスト家としては大きな損失だがな」
「ごめんなさい」
「白魔術師を目指すと言われた時、白魔術師にどうしてもしてあげたい子がいるから俺がサポートするんだと言ってた。それがミラーお前さんじゃ。ミラーはカシオネの未来も決めた。何を血迷ってとも思ったが、その頃から居なくてはならない存在だったんだろう。あの子はただフォレストで一流の錬金術師になることにも迷ってた。他に自分ができることがあるんじゃないかとね。定めとはそういうものだ」
「はい…カシオネが居なかったらたぶん私は今、白魔術師をしていない。彼は私をいつも導いてくれてました」
とミラーが笑った
「その笑顔よ。かわいいのだから、笑ってなさいそれがいつでも救いになるわ」
「はい」




しばらくお茶を静かに飲んでると、カシオネが部屋に入ってきた。
「カシオネ、また失敗したの」
「終わらせたんだよ。おやじの課題じゃあるまいし、そうそう簡単に失敗するか」
そう言うと二杯目のミラーの茶を取り上げ一気に飲み干す。ミラーがじーっと見てると
「なに欲しいの?」
と言って口づけしてくる。親の前でのことなのでさすがに抵抗するミラーが抵抗がやむまで唇は離れなかった。
「馬鹿…」
ミラーの顔は真っ赤だ。
「人前は平気でも親の前じゃ嫌か?」
「だって…」
と口ごもる。
「俺は抱けるぞ?抱けないとしたら浮気相手の前くらいだろうな」
「いるの?」
「いる訳ないだろう。いたら口にするか」
「それもそうね」
「節操なし」
「何とでも言え。俺は正直なんだ」
「それは知ってるけど…」
「なら愛してることを証明して何が悪い。こそこそ愛し合って、愛し合ってるかもわからないような間柄は嫌だ」
「サンドラたちはそれでも愛を深めていたわ」
「俺たちの知らない間にな。それが嫌なんだ俺は」
「お前は独占欲と誇示欲の塊だな」
「かもしんないけど、今ミラーとの間に残るのはそれだけだからな。他の男に触らすのも嫌だが正直だ」
「ドルドネとのパートナーが大変ね」
とため息をつくミラー。
「最初は嫌だったな。だけどあいつはミラーを上手に使うから。大物狩りにはうってつけだ」
錬金術がかかわると変わるの?」
「仕事だから仕方がないが正直なところだが」
「ほらほらそこらへんにしなさい」
「ごめんなさい」
「だけどおふくろ」
「わかるから言わなくても。母親なのだから」
「わかったよ」
「おふくろ。それより兄弟の写真あるか?できるだけ最近の」
「ああミラーはまだまともに顔を合わせたことないわね。錬金術してると後姿ばかりだから」
アルバムを持ってくる。
「昔、人間界で買ったカメラだから画像は悪いけど」
「これが魔王に殺された長男、これが帝魔術師に殺された三男で後は端から紹介していくと………となるわけだ。家に入らない限り、居るってことだけ覚えてくれてたらいい」
「うん。でも今は12人兄弟かぁ寂しいね」
「3人の姉に9人の兄がいるんだぜ。寂しいレベルじゃないさ。死んだのは辛いけど長男も三男も子供残してるし血は途絶えてない」
「そっか14人居るって事は最低でも14歳差があるんだもんね。子供もいるかぁ」
「そういうことだ。他にも沢山死んでるんだけどここで暮らしてないミラーには、わからない人ばかりだから」
「うん」
ミラーは父の方を向いて
「この度は沢山の一族がお亡くなりになりご愁傷様です」
という。
「それはなんだね」
と聞く父。ミラーは戸惑って、そういえばシャルレンゼにも通じなかった。
「えっと沢山の方を亡くしてしまって悲しく感じます」
でいいのかな。
「人間の言葉は難しいな」
と改めて父。そしてフォレスト家を後にした




「もうひとつだけ教えといてやる。フォレスト家で人目を気にしてたら子供は作れない」
ミラーの部屋でそれだけ言われた。環境の違いかと思わず納得するミラー。そのまま錬金術に行ってしまったのでミラーは一人だ。仕方なくマシャルのノートを開く九割は習得していた。後一割は五属性の魔法だ。目を通したがほぼ使えるか、それ以上に強力な魔法を習得していた。明日は黒魔術師掃討の仕事が久しぶりに入っている。一人だが、気をつければまだ掃討できるほどの者しかいるまい。そう思って眠りについた。


夜、いつも感じる感覚で目を覚ます。
「やっと目を覚ましたか。寝たままだったらどうするか迷ってた」
「あー夕食。食べはぐれた。カシオネは?」
「俺もだ」
「何か作る」
「やだ、このままいかせろ」
「もう…」
といいながら過敏に反応していく体。子供が生めなくなってから、また回数が増えている。カシオネは何かを埋め尽くすように求める。それが逆に悲しい。カシオネが求めるときは、満ち足りてないときだ。やっぱりショックだったんだろうなと思う。だけどこればかりはどうしてもやれない。愛を愛で、ただ応えるだけだ。時間をかけてしか解決しないだろう。




「ミラー、こんな俺でいいのか情けなすぎる」
「大丈夫だよ。ミラーはカシオネだけのもの。カシオネしか知らない。それでいいでしょ」
「もし運命の相手が違ったら?」
「それはありえないよ。ありえてもカシオネを選ぶ。私の20年はカシオネと共にあったんだから」




カシオネが珍しく買い出しに行った。そうそうに黒魔術師を掃討したミラーは中央広場に居た。仕事をしてるものが多いので人気がない。そんな時に一人の白魔術師が近づいてきた。自分も光属性の魔術師だから魔法のことを教えてもらいたいと。だが要領が悪い。丁寧に教えていくが、なかなか発動しない。動きが悪いのかと手取り足取り教えてみる。それが罠だった。無理な姿勢をした時に押し倒されるミラー。咄嗟に発動するミラーの光。普通なら人一人くらい弾き飛ばすが、同じ光の発動で押しつぶされる。迷わず入ってくる舌にミラーは噛み付いた。
「このあばずれが!」
と二、三発殴られると服が無理やりむしり取られる。動転しながらもその短い時間を逃さなかった。
「心よ一人に強烈な痛みを」
だか
「光よ術を打ち消せ」
そのまま男の舌が胸をはう。
「いやーっ!」
ミラーの声が鳴り響くとともに、二度目の光が発動した。男の押し返そうとした光はつぶれミラーの光が相手を飲み込む。そのまま男は倒れこんできた。瞬殺っで警戒音も鳴らない。慌てて離れるミラー、立てずに座り込んだまま嗚咽をもらす。そのうちに気持ち悪くなり全てを吐いた。そして体は震えたまま動けないでいると…




サンドラがミラーをみつけた。あまりの様子のおかしさに近づいてみて、はっとなる。倒れている男、ぼろぼろにむしり取られた上着、嘔吐物、サンドラは状況を察してミラーに近づく。思わず光を発動させるミラー。それを
「闇よ光を打ち消せ」
で消すと後ろから抱きしめる。
「大丈夫、サンドラよ。貴方の敵じゃないわ」
「どうしよう…人一人、殺しちゃった…」
ミラーの震えは止まらない。警戒音を鳴らすサンドラ。何人の者かが集まる。
「お願いだからエンジェルとカシオネを連れてきて」
と頼むサンドラ。事態は最悪の収拾を収めたことを知ると、そこに居る者がエンジェルを呼びに行った。ミラーがつぶやきだす。
「カシオネ、カシオネ、カシオネ…」
「待ってて今呼んでくるから」
とサンドラは抱きしめたままだ。魔法で探知されたカシオネが急いで戻ってくると荷物を錬金術師に放り出して、慌てて場所に向かう。そこではエンジェルが悲痛な顔で事態を見つめていた。




サンドラがカシオネを見つけて
「どうにかして、このままじゃミラー壊れちゃう」
カシオネは近づきサンドラと変わる。つぶやき続けるミラーの唇を塞ぐカシオネ。一瞬抵抗してまた光が発動する。それをサンドラが消す。
「いやーっ」
「ミラー、俺だ。カシオネだよ」
そう言うとカシオネは再び口付けをする。震えは止まらないまましがみついてくる。
「カシオネ?」
「そうだよ、他に誰がお前にこんな口づけをする」
「私、私…人殺しちゃった…カシオネ以外に汚された…」
「大丈夫だから落ち着け。事態は誰の目にも明らかだ。悪いようにはならない」




「うちじゃ強い奴よ。この前の帝魔術師の戦いは拒否したけど、簡単に殺される奴ではないわ。それをミラーは光で光の者を殺した。彼も素行の悪さもあって危険因子登録されてたけどミラー貴方も危険因子登録せざるを得ない」
とエンジェル。
「でも、この状況はどう見たって殺されても仕方ないほどのことをミラーにしようとした。ミラーは事前に咄嗟に回避しただけよ」
とサンドラ。
「わかってる。だから登録だけでどうこう言うつもりないわ。ある意味ミラーの力を誤った自業自得の行為。女としても許したいことではない。内密に事故処理とするから安心して。ただミラーを見る目を人は変えるわよ。人一人殺したとはそういうこと。それから子供がいるか調べてもらいなさい」
「それは大丈夫だ。見た限り最後まで犯されたわけじゃない。それにミラーはもう止まってる」
とカシオネ。
「何言ってるの。不可抗力で殺したとはいえ人殺しは初めてではないはず。カシオネしか知らないミラーにはショックだったでしょうけど、それでも嘔吐する気持ちの悪さは異常よ。たぶんできてるわ。カシオネ、あなたの子がね。止まる最後に間に合ったんじゃないかしら?」
とエンジェル。
「ミラー…今の話わかるか?ちゃんと聞けてるか?」
「私…人一人殺した…」
「背負うな、お前がやってなきゃ俺が殺してる。受け止めるから背負うな…故意じゃない。恐怖が殺したんだ」
「カシオネ…怖い」
「うん。後で忘れさせてやる。それより子供が居るかもしれない。俺とお前の子。いなくてもともとだ調べてみよう…わかるか?」
「私の子…わたし止まってる」
「ああ、止まって何ヶ月たつ?」
「4ヶ月ほどだと思う…」
「エンジェルがいるかもしれないって最後に間に合ったかもしれないって、調べてみよう」
「…怖い…怖いよカシオネ」
「大丈夫だ。できてても俺の子だよ。勇気出して」
その晩、ミラーはいつもよりさらに熱い抱擁を受けた。私はカシオネだけのもの…例え誰であれ結果は同じだったと。




「…きっかり4ヶ月、止まったのと同じ」
「そりゃそうだろう。そういうもんだ。居るんだな」
「うん。居るって」
ミラーを抱きしめるカシオネ。
「諦めてみるもんだな。愛情の方が深くなったとたんにこれだ」
「私、産めるかな。怖いな」
「大丈夫だ側に居る。愛してる」
口付けしてくるカシオネ。ミラーは微妙に震えながら応える。例の件以来、抱かれることに多少なりとも恐怖を覚えてる。カシオネは忍耐強く。ミラーを愛した。本来は子供が居るのなら、自粛するべきなのだがカシオネはミラーを愛することを優先した。元通りに受け入れられるようにしばらくの時間がかかる。
「あっ、今、動いた?」
「うん。蹴られた」
「大丈夫だな。落ちるかもとか思ったが…」
「仕事も普通にしてるし、光もあの時だけで安定してる。産むのは苦しいのかな他の人より」
「わからん。そこまでは聞いた事がない」
「カシオネもう嫌だ。カシオネ以外の唇を感じるの怖すぎる」
「危険因子登録されてるんだ。近づく馬鹿もいるまい。むしろ錬金術の人間も直接お前から物を受け取らなくなった。恐怖ってのは怖いな。慣れるのにも時間がかかるだろう」
「そっちは慣れた。カシオネに抱かれるときでも、あいつの舌の感覚を思い出す。それが一番辛い…」
「それも薄れてきてるだろう。震えなくなった。」
「カシオネが怖がっても抱いてくるから…」
「自然に癒えるのを待ってられるか。お前はおれのもんだ。もし傷ものになっても代わりはしない」
「それは嫌だ…」
「だから殺したんだろう」
「他のやつがなんて言おうと、お前が俺を愛してる何よりの証拠だ。人一人の命ぐらい背負ってやる。お前が背負うことじゃない。話を変えよう…名前なににする」
「なんでも…決めて」
「カルラはどうだ?」
「いいよ人間の世界では神様の名前」
「それは大げさだな。カルラナにカルラスかな」
「カルラには何の意味があるの?」
「魔法語で思い出してみろ」
「…奇跡か…」
「ああ、そういうことだ」
口付けをするカシオネ、だがミラーの唇は緩まない。
「ほら、力を抜いて、怖くないから。欲しいんだ」
「…うん」
まだ恐怖が残っているミラーだった。








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