勝手がお好き!!~徒然満載

ゲーム依存症の創作好き

裸の少女 02

町を一緒に歩き一つ一つ丁寧にどんな場所か教えて回る。一人では来てはいけないと注意しつつ裏路地も回った。いろんなひとがいる。浮浪者からチンピラ、昼間から売春婦までいれば、靴磨きの餓鬼に怪しげな占い師。場所も吹き溜まりから場末の飲み屋、闇医者に教会や安ホテルにアパート。裏路地を抜けようとしたところで娼館もみつける。
「甘い香り、今朝カネンが身につけてたものと同じだわ」
「どこの娼館も香と蜜を使っているからなぁ」
「今までそんなことなかったのに…今説明してくれたばかりよね。男が交わりを持つために女を買う場所だと…何故?…もしかして昨日私が誘惑したから?他の女で済ませたの?私、汚れてる?父親と…」
「そんなんじゃない。二度と大人の犠牲になるな。カトリーヌお前は14歳だ。口付けも知らなくても不思議の無い年齢なんだよ。俺はお前を大事に育てたい。ただそれだけだ。他意はない」
「もう…誘惑なんかしないから許して。ここらはずーっと民家ね」
「許してるさ。裏路地に近いほど値段は安くなるが治安が悪い。市場に近いほど値段は高いが治安は良くなる。市場近くまで行こう」
カネンは市場近くのビルに入っていく最上階を指して部屋に連れて行ってもらう最上階は家が四件しかない高級マンションだった。
「風が気持ちいい」
「どうだ?ここで暮らしてみないか?いずれお前のものになる気に入った場所がみつかるまで探すぞ」
「いずれお前のものってカネンはどうするの?」
「俺も家を三件ほど持ってるが全部場所が割れている。六年間、いや一生になるかもしれないのにホテル暮らしじゃなんだろう」
「カネンは私の父親を殺し外の世界へ連れ出した。何もわからない私の側に居る義務があるわ」
「わかってる。今は一緒に暮らすよ。だけどずっとじゃない。君は世間を知り大人になる。その時はお別れだ」
「私には今、世間に溶け込むことに集中するしかないのね。別れたくなくとも…」
「始めてある意味知り合った男だから興味を持っているだけだ。いずれ相応の人にめぐり合う」
「……場所はここでいいわ。何も無いのが気になるのだけど?」
「だから世間知らずなんだ。ホテルじゃないんだ。必要なものは自分で買う。家具を見に行くぞ」
一週間後にはホテルから引っ越してこられた。そしてカトリーヌが問う。
「森へは帰らないの?」
「俺は帰る。お前は町に暮らすことを勧めるが森に行きたければ止めはせん」
「カネンも一緒?」
「女一人は物騒だし、森では森の生き方がある。それはべつでおしえねばならないだろう?」
「もうひとつ疑問。町ではお金が必要なのね。そのお金はどこからくるの」
「大人になれば働いて稼ぐしかないな。だがお前には俺のお金を相続してやる。一生馬鹿な贅沢さへしなければ暮らせるだけの金額はある。俺は俺自身で稼げるしな」
「…そう」
「どうした?急に元気を無くして」
「だって、それは殺しでしょう」
カネンがカトリーヌの頭をぽんぽんとする。
「基本的にもう人殺しはしてない。魔獣の討伐がほとんどの仕事だ」




それからカトリーヌはさらに勤勉になった。語学数学はもちろん。社会的一般常識や作法まできっちり身につけ16歳の頃には町に溶け込んでいた。そしていつもお世話になっている市場で働いていた男の子に告白されるまでになった。店主に身分違いにほどががあると言われながらぎこちない恋愛は始まった。しばらくは町を案内されて上手くやっていたが半年ほどすると…
「それでねチキときたら手をつないでいいかって聞くのよ?そんなこと造作も無いことだろうに不思議よね。でも考えてみれば手を繋いで歩いてる姿なんて滅多に見ないわ。これはどういうこと?」
「恥じらいだな。子供の頃は誰もが迷わずても握って歩くし触れ合うような口付けもする。だけど異性を意識しだすと早くて四、五歳頃からかな父親と風呂に入るのを嫌がりだしたり口付けを拒むようになる。家族でそれなのだから他人とはもっとだな…それが恋愛をすることで再び近づいてくる恥ずかしい気持ちより相手を求める気持ちのが強くなるからだ。お前はその恥じらいを知らない。始めてあったとき素っ裸だったろう?」
「恥ずかしいこと?傷があるわけでもない手入れもしている見られてそん色ないだけのボディは作ってるわ」
「だからって相手の前で脱ぐなよ。引かれるか押し倒されるぞ。普通の感覚じゃないんだお前の感覚は」
「三年経ってもまだ感覚の違いがあるのか。困ったわ」
「彼氏が居るんだ教えてもらえ。相手の望む順序が本来の段階だろう。普通の感覚を身につける材料にしろ」
「チキは人格をもった男性よ?」
「だがカトリーヌは人格を壊されている少女だ」
「16歳になったわ」
「俺から見れば餓鬼だよ」
むーっと言われながら食事の続きをするカトリーヌだった。カネンは笑ってみている。それでも恋愛ごっこが出来る歳になったんだなと。




ある日、えらく機嫌悪く帰ってきた。買ってプレゼントしてくれた服が黒じゃなかったらしい。その場で破り捨て大喧嘩になったみたいだ。ベッドの上でひとしきり悪態ついて落ち着いたカトリーヌにカネンは聞く。何故黒じゃないといけないのかと…カトリーヌはカネンも白い服が似合うと言った。チキも白い服を買ってきた。でも白い服は父親から与えられ続けた服なのだと。いい意味でも悪い意味でも思いが父親に走ると。私が決めた色は黒。全てを闇に染め上げていく黒、私の知らない何かを補ってくれる色なんだと切に語る。カネンは抱きしめる無垢のような顔の下で全ての異常に気付いていてなお幼いふりをしていたことを思い知る。だからこそ新しい生活をいとも簡単に受け入れたのだ。白い服と黒い服はその歪みなのだ。ただの主張じゃない恐怖だろう。それを青年は引き起こしてしまったのだろう。カネンはカトリーヌを薬で休ませるとチキのもとへ行った。服の侘びと彼女は精神面の過去の呪縛から今は黒服しか着れない事をつげる。
「なんだよ。それ。結婚式は純白のドレスだぜ」
「結婚式をあげるには二人とも若すぎるだろう。数年かけて本気なら平気にさせてやってくれ。カトリーヌも苦しんでるんだ」
だが二人の恋は半年後悲劇で終わる。




「カネン…」
カネンの顔がきびしくなる。ただごとでないのはひと目でわかる。カトリーヌの顔は憔悴しきって顔色が悪い。カネンの胸に飛び込んだカトリーヌはわんわんと泣き出した。カネンは髪を撫で背中を叩き、ただ泣き止むのを待つ。1時間ほどしてカネンにしがみつきながらポツリと
「チキを殺しちゃった…」
「人を殺した経験はなかったはずだな?お前はレゼの資格をもってても実践の経験はなかったはずだ。何があった」
「何もなかった。ただチキが口付けを触れるものから一歩先に進みたいと言って舌が入ってきた時、嫌悪感を感じた。無理やり引き離して、まだ無理って言ったけどもう我慢できないって髪の毛ひっぱられて顎をこじあけられて舌に絡み付いてきたとたん最初の口付けを思い出した。聖なる儀式を最初から受け入れていたわけじゃない。聖なる儀式だからこそ受け入れるようになった。それがただの性欲行為だと知ってる今、恐怖しかなかった。やっぱり髪の毛をひっぱられ顎をこじあけられ舌に絡み付いてくる舌を涙を流しながら受け入れて…でも今の私には力があった。チキを風の魔法で一揆にずたずたに引き裂いた。目を見開いたままチキ死んでいったよ。私力を途中で止めて治癒に力を転換することもできなかった…」
「お前、治癒能力者か?閉じ込めてもレゼとして育てられるわけだ…治癒の能力は何度となく使ったろう」
「うん。いろんな人が来て治癒を受けていった」
「チキはどこら辺にいる。ここらは大抵印をつけてある。ひと目を避けて現場に向えるはずだ」
「二人っきりがいいっていうから東のピクニック場からさらに奥に入った川原でピクニックしてた…」
「一人でいられるな?少し行って片付けてくる。チキとは森ではぐれたことにしておけ」
ひしっとしがみつくカトリーヌ。
「私も行く。その方が探さなくて済むし一人は怖い。自分が怖いよカネン…」
「今のお前に死体を片付けるところを見せたく…わかった、わかった。泣くな。連れてくから気だけはしっかり保てよ?」
泣きながらもカトリーヌはうなずいた。そして二人は東の森に飛んだ。
「キャンプ近くの川原というとここら辺なんだが…」
「こっち…ここにいる」
カトリーヌは下を向き神の身印を描いて祈る。カネンが何か複雑な呪文を唱えている。聞いた事はないが恐らく地系と肉体系と破壊系…精神系も混じってる気がする。そしてチキは風船のように破裂した血しぶきさへも飛ばない。完全分解してしまったらしい。
「チキ…」
「死んだ跡が残ってるといろいろやっかいだから消させてもらった」
「チキは何も悪くないのに!」
「だから来るなと言ったろう」
カネンはカトリーヌを胸に抱き寄せ
「お前が魔法を使えることをこの街の人間は知らない。疑われはしないだろう」
「カネンは?カネンはどうなの?」
「俺は殺し屋としては有名だ。その頃に使ってた町だしな。だが無駄な殺しもしないことは誰もが知っている。俺も大丈夫だ。チキは自分の意思で姿を消した。森の中で別れ話をして別行動をとり、はぐれたことにすればいい…14歳のとき俺にお前から口付けをしてきたときがあったな?平気だったのか?」
「わからないわ。カネンは受け入れてくれなかったし、チキとも触れるような口付けなら何度となくしてた」
「それが限界か。町で覚えることももうないだろう。少し旅に出るぞ」




「カネン、今日は豊作よみてこの果実の山。たまにはいいでしょう肉以外のものしか食べない日があっても」
「昨日の肉が残ってるさ。だが肉のが保存が利く。美味しいうちに果実を食べるとするか。おいで」
カネンが果実の皮をむくと半分に切り種を取り出す。それをカトリーヌに自分の手で食べさす。残り半分を自分で食べる。頭に手をかけると顔を近づけさせ唇を合わせる。食べている間、何度となく繰り返される行為だ。触れるだけの、だけどとても熱い思いが伝わってくる。事の成り行きは三ヶ月ほど前にさかのぼる。急な坂の崖道を杭一本さえなしに昇る途中で滑り落ち、足をくじいてカネンに抱かれて登った。その時にカトリーヌは再びカネンに唇を重ねたのだった。
「それ以上、なにもできんくせに」とカネンが言うと
「それでも私の人生を変えてくれた人だわ。チキの傷も随分と癒えた」
「いくつになった?」
「19歳になったとこ」
「俺こそ汚れた人間だぞ。愛した女もこの手で消した。チキのように」
「今でも愛しているの?」
「いや、悲しいぐらいに顔も思い出せない」
「なら、愛して。私の力を止められるのはカネンしかいない…私を現実にすくい上げたのはカネンよ?」
「すくいあげただけだ救ったわけじゃない。俺の愛は重たいぞ。二度と失うのはごめんだからな」
それからだカネンの方から口付けしてくるのは。寝るときも抱きしめられ腕の中で寝る。久しぶりに町に下りてきて服を物色していた。カネンが女物の服の前で立ち止まっている。見に行くと慌ててその場を離れようとする。
「何を誰に渡す為に物色してたのカネン?」
とカトリーヌが聞いてくる。
「…お前にだが、いいんだ白色だったから傷に触る」
「着るわよ?カネンが選んでくれる服なら白色でも…そろそろ父親のつけた傷もどうにかしないとカネンが辛そうだし…私も辛い…一つになりたいよぉ。カネン…」
「カトリーヌ…俺はお前を大人の犠牲にはもう二度とさせないと誓ってる」
「なら、いっそ殺して」
「カトリーヌ?」
「もうわかってるでしょう。犠牲なんかじゃない。私は罪を犯し続けていたのよ?知らないなら私は犠牲者でいられたかもしれない。知ってしまった今は取り返しのつかない罪。取り返しのつかない過去に嫌悪してる」
「すまない。カトリーヌ…」
「何故謝るの?あのままだったら私は滅びるしかなかったわ。人間に戻してくれたのはカネンよ。苦しくとも私は人として自分の意思で道をひらけるわ。まずは自分で服を選びましょうか」
そういうと笑って服棚に戻る。選んだ服は格子のシャツに緑色のズボンだった。それはカトリーヌの覚悟の印だ。カネンは自分の服と白いワンピースを結局買った。街の中では騒ぎを起こしたくなかった。今まで通りに黒いワンピースを着てたわいもない話をしながらホテルで生活する。ただ、ずっとツインをとっていたのにダブルをとった。森の中と同じように抱きしめられて寝る。髪をなでられびくっとした。父親が儀式を始める合図のようなものだったから。カネンは敏感に捉え
「怖いか?」
「大丈夫慣れるから」
だがそれ以上はなでたりしなかった。ただただこれでもかというくらい強く抱きしめられた。次の日にカトリーヌがいう。
「そんなに強く抱きしめなくても逃げないよ」
「俺にもトラウマがある。腕からいなくなって所要に行った先で死に掛けてた。仕事中で騒ぎは起こしたくなかったから消した。最後の最後くらい抱きしめて泣きたいだけ泣きたかったさ。でも人である前に殺し屋だった」
「それが愛した人。それが人じゃなかった頃のカネン?」
「そうだ」
カトリーヌが後ろから抱きしめる大きな体は両手が届くようなものではないけど
「私たち人じゃいられなかった。これからもいられるとは限らない。でも二人の時間だけは人であろうとなかろうとお互いを求めて信じあっていけるわ。カネン、貴方は沢山の人を殺したかもしれないけど私を拾い上げた。とても勇気のいる事よ。どうでもいい家庭のどうでもいい道外れた関係から私をつれだしたわ」
「…それは出会ったお前があまりにも美しかったから…物怖じしないあまりにも綺麗な裸体をみせられたから、それが汚されていると思うと耐えられなかった」
カトリーヌが後ろで微笑むのがわかる。こんなに敏感に殺そうとしなくても相手を捉えることはできるのだ。
「私たちは補うために出会ったわ。こんなに足りないものが沢山ある。私は五年経った今も正常とは言えないし貴方は死者の呪縛から逃れることはできない。磁石が引き合うように私たちは引き合ってるわ。お互い自覚をする頃よ。私も始めてであった頃から貴方から逃れられなかった」
「森へ帰ろう。そしてお前を俺のものにする。あんな父親の経験が最後になるのは嫌過ぎる」
「私もよ、カネン」
「ただ苦しいぞ、忘れられるまで、お前の体に俺が染み付くまで苦しみ続けるぞ」
「覚悟してる」
「魔力を封じて抱き続ける。全く傷つける気などなかったのに、結局傷つけるな。薬はいらないな?19歳ならできたら産めばいい。もう俺は手放す気などないのだから…ただ俺の素性が知れない。できないかもな」
「カネンの子…できないって?」
「俺の能力は桁外れだ異常値と言ってもいい。俺こそ血の濃い可能性がある。想像の域はでないがな」
「カネン…」




森に行き日の高いうちから二人は求め合う。カトリーヌは抱きつき、カネンは耳元で
「欲しい」
とささやく魔封じが破られたときのことも考えて人の来ないような深い森を選んだ。魔法がかけられ、広くマントが広げられその上にカトリーヌは下ろされる。真っ白なワンピースを着ている。きっと二人は結婚式などはあげないだろう。心のつながりだけで生きていく。普通に暮らすには普通を通り越した経験をしてきた二人だから…。最初の口付けと最初の挿入は相当な抵抗をした。それこそショック死してしまうのではと思えたがその間の前座は意外と静かに受け入れた。むしろ始めての感覚だったらしく悶え喘いでいた。口付けと挿入とフェラだけをくりかえされ女の喜びは何一つ教えられてなかったのかと思うとカネンは苦しくなった。そんな経験にカネンが与える官能が負けるわけもなくそうかからずに二人は自然と関係をもてるようになった。カトリーヌが朝起きるとカネンは必ず起きている。そしておはようの口づけをする。一瞬びくつくだけで受け入れるようになっていた。じきにそのびくつきもなくなるだろう。カネンはことあるごとに口付けを繰り返していたから。ある日カトリーヌが問う。
「カネンの口付けはどうしてそんなに長いの」
「欲だろう。いつ死んでもおかしくない生き方してたからな」
「お前のほうこそあんな抱かれ方してたら濡れもしなかったろう」
「それは汚れた液だと言われてたもの。濡れる事は許されなかったわ」
「どこまでもいかれてた父親だったんだな」
カトリーヌが口付けを求める。それに応えるカネン。
「でも、ほらもうカネンには恐怖を感じたりしないわ」
そう言ってすりよる。
「成人するまで大事に育てるつもりだった。成人したら手放す気だった。血塗られた俺の側には置いときたくなかった。なのに男とは弱いものだな、成人する前に自分で抱いちまってる」
ただカトリーヌは笑い顔で聞いている二人の苦しいときは終わり後は静寂が支配するだけだと信じて…