勝手がお好き!!~徒然満載

ゲーム依存症の創作好き

魔法使いになりたくて 33

一年間の基礎訓練を終え六人は二年生になったところだった。二年になると真っ白なブレザーが支給され、それが制服となったが、実践が多いことで六人は大方、ジャージを着て過ごしていた。




ミラー、カシオネは事務室に呼ばれていた。どうやら白魔術師学校は白魔術師施設と併設されてて先生も事務員もみな白魔術師そのものらしい。アレクシラが口を開く。
「二年からパートナーを決めるんだけど、貴方達は二人とも強いわ。希望はお互いを求めてるのは確認しました。第二希望も第三希望も口裏合わせたように空白なんて始めてよ。でも他の子も貴方達を希望してるわ。離れてみない?新しい可能性が見つかると思うのだけど…」
「ごめんなさい。カシオネは私のために白魔術師の道を選んでくれました。そしてその前からずっと一緒です。離れることなんて考えられません。他の子と組んでも私の実力は半減すると思います」
「いつから一緒なの?」
「一年から…」
「12年間ずっと?」
「はい」
「カシオネはどう考えてるの?」
「俺はここの錬金術に興味を持っています。訓練の間は一緒にいられても離れている時間は長くなります。それでもミラーのフォローに回りたい。俺の錬金術がミラーの役に立つならと考えてます。もちろん白魔術師の錬金術自体を向上させる野望もあります。でもパートナーはミラー以外、考えていません。俺が白魔術師を目指したのは、彼女を白魔術師にするためです」
「説得も強制もできるのだけど、パートナーは重要だから…もったいない話だけど条件付で貴方達のパートナー希望を適えてあげるわ。今、白魔術師に討伐依頼が来ているわ。白魔術師二、三人でやる討伐依頼だけど、それを討伐してきたら貴方達は白魔術師としてすぐ使えることを証明できる。二人の絆をね」
「それはどんな生き物ですか?」
「バックルという大牛よ集団で暮らすからそのボスだけ倒せば散り散りになるはずよ。死なないとは思うけど気をつけて。これが地図になるわ。やってみる気ある?」
「もちろんです」
「いくつか聞いていい?何が一番好き?」
「一番好きなものですかぁ…カシオネの心臓の音かなぁ。小さい頃から一緒に昼寝とかしてたから…」
「カシオネは?」
「俺は錬金術の調合している時です。1/10000の数値をだす瞬間、のぴんと張り詰めた空気ですね」
「休みに二人でよく出かけてるのは?」
錬金術の材料を取りにいってます。ここのは質も悪いし量も少ないし」
「はっきり言うのね。錬金術部門カシオネ一人で変えられる?」
「変えて見せます。フォレスト家の威信にかけて」
「それは卒業したらミラーは一人になることを意味するわよ?なら今でもいいんじゃない?」
「アレクシラ先生、錬金術には様々な材料が必要なんです。それは私が集めます。組織が動くには時間がかかるはずですし、それに一人じゃありませんカシオネの助言、励まし、心配そんなものが私を支えてくれています。それに食事も睡眠もせずにずっと錬金術をするわけじゃないですから一緒にいられる時間はお互いでつくります」
「そこまで言うなら引き離すのは酷ね。大牛を倒してきなさい。死ぬんじゃないわよ」
『はい』




「水場はルール違反ね餌場を探しましょう」
「だいたいこっちだよ」
「カシオネ?例のごとくもしかして」
「もしかしなくても、錬金術の材料だよ。強いから倒せない、貴重な材料だけどね」
「知識の幅には呆れるわ。どこの部分がいるの?」
「角と脳だ」
「じゃあ首を切り落とすわ」
「そんなに簡単にいくならな。ここだ」
「大地よ大きな剣となりて現れよ。風よ吹き荒れ目前の獣たちを蹴散らせ」
ミラーは一番大きな牛に向かっていく。一手目は深く首に傷をつけたが、それで敵と見なされて大暴れを始める。なかなか切りつけるが致命傷にならない。角から逃げるのに精一杯だ。ミラーが距離を置くたびにカシオネが氷の刃を降らせる。動きが少しずつ鈍くなる。ミラーも風の魔法で体を傷つける。一瞬動きが緩んだと思ってミラーは切りつける。カシオネが
「待て攻撃の為だ!」
と言った時には遅かった。角で凄い勢いで放り投げられ木にぶつかる。ミラーはとっさに防御結界を柔らかくしクッション材にして難をのがれるが…
「大地よ我に数倍の力を与えたまえ」
とカシオネ。ミラーに向かってく大牛を、角を捕らえて歯止めする。
「なんて無茶を」
木を蹴って一気に牛の上に跳んできて
「光よ剣に舞い降りて強きものを切り裂け」
一気に首を切り落とす。血しぶきが二人にかかる。
「ミラー無事なのか?」
「結界が間に合ってる。それよりなんて無茶してるのよ。素手で牛とやりあうなんて」
「剣だって対して変わらないだろーが、弾き飛ばされて死んだかと思ったよ」
「土系が得意だと剣が楽なのよ。防御結界張るのも早いの知ってるでしょうに」
「そうだな。でも頭が真っ白になって魔法が思いつかなくって、とにかく止めをささせまいと…」
「カシオネらしくないなぁ。しっかりしてよ。血を落としに行こう。風よ残る牛たちを翻弄せよ」




水で落ちるだけ血を落とすと二人で横になっていた。
「ミラー」
カシオネがかぶさってくる。
「頼むから先に死ぬな。お前のが、危険なのはわかってるけど」
「死なないわよ。私はマシャルを追い越すんだから光の魔法だってまだ、んくっ」
カシオネの唇がミラーの唇を塞ぐ。しばらく愛撫されるままにミラーはなすがままだった。唇が離れると
「か、か、か、か、カシオネ?」
「愛しい。どれほど思ってもたりないくらいに愛してる」
「?カシオネ、女日照り?」
「馬鹿!真面目だ。他の女なんてどうでもいい」
「ミラーは一人になるのを凄く不安がっていたろう?恋人ができたら一緒にいられる時間も少なくなるって、俺たちは二人の関係を認める相手を捜せばいいと言った。でも、そんなの無理なんだよ。一番大切な存在がミラーなんだから」
「いつから?」
「10年生くらいからかなぁ意識してたのは。ただ俺の勝手な思いだしと思ってさ、だけど…ミラーは側にいないと不安がるし…」
カシオネはミラーの首に口付けしながら胸を触る。
「怖い?」
「ううん。カシオネの胸の音はとても静か」
「うん。ここで抱いちまうつもりはない。でもミラーの気持ちは、もう俺を受け入れてるよ」
「そうなの?」
「親友に抱かれたいとは思わないさ」
「でもカシオネの胸の音は静か」
「早くなるよ」
ミラーはまた長い口付けをされてその唇は首に降りていく。下着は脱がされ唇が胸をはう。
「カ、カシオネ、わかったから。今すごい早い」
「うん。欲しくて欲しくてたまらない。上着を着て」
「カシオネが男なのはわかるけど、欲情されるとは思わなかった」
「ミラーはほんと頓着しないな、他の男に抱かれている自分を想像してみろ」
「…考えたくない…」
「それが全てだよ。ミラーだって欲情してる。体熱くないか?」
「熱い。でも鼓動の方が早い。静めて」
「おいで」
しばらくなにもしないまま二人は抱き合っていた。
「静かになった。不思議だね。高まったり、静まったり」
「そうだよな。昔は三人で抱き合って寝てたんだ。ミラーは真ん中だったから…。」
「二人の鼓動聞いてた。心地よかった」
「好きなだけか、愛してるのかなんてミラーにはわかんないよな」
「うん。でも側にいられるならなんでもいい。それだけはわかった。嫌いにはなれない。このまま乱暴されても…」
「乱暴するよりも受け入れちまってたろ」
「くすっ、そだね」
こてとカシオネの胸に頭の重心を置く。
「どうした?」
「わかんない。こころがすごくそわそわする」
ミラーが落ち着いたら、二人は牛の頭を持って帰っていった。




「首切り落とすのは大変だったでしょう?二人とも怪我がなくてなによりだわ。言い忘れてたけど、毛1本あれば、ここでは獣の種類わかる魔法あるのよ。苦労させたわね。ごめんねぇ」
「いえ首から上は錬金術の材料なので必須だったので構いません」
「これで二人は念願のパートナーよ。ただし他の子より厳しい条件の課題がだされると思ってて」
『わかりました』
と二人。
「12年も一緒だと声もそろうのね。それよりよく見たら血だらけじゃない。血を落とすから早く着替えて洗濯へだしてね」
それだけ言うと頭はそのまま持っていっていいというので、二人は錬金術室にいった。錬金術をしている人たちから歓声があがる。
「そんなにすごいもんなんだ」
「そうだよ」
「今度は地味に狩ろうな」
「また行くことがあればね」
二人は退出した。




寮の前でミラーがカシオネの裾をひっぱる。
「何?」
「ミラーはカシオネのこと愛してるの?」
カシオネが優しく笑う。
「たぶんね。今日みたいなことがない限り慌てないから焦らずに考えてみるといいよ。過去の言動や気持ち」
「…うん。着替えに行くね」
「俺もだ。また後で」




ミラーは考える。でも基本が鈍いのだ。好きと愛してるにどれほどの違いがあるだろう?わかるのは一緒にいたいそれだけなのである。むしろ求められて受け入れてしまった自分の方に驚きがある。恋人ができて、そういう間柄になっても、つきあっていける自信はあった。だが、その恋人に抱かれて平気かと聞かれたとき自分には明らかに迷いがあった。いや、思考が拒絶した。でも、側から離れる人ではないと確信して安心したかな。いつかは…離れる。そんな不安があったから。だったら、答えを先延ばしにするのは酷だよね。でも自分の気持ちに自信は持てない。どうしょう…今の関係が壊れるほうがよほど怖い。ぐるぐる、ぐるぐるとミラーはそんなことを考えるのだった。





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